小さな独裁者


 2020.10.29      ただの上等兵が将校になりきる【小さな独裁者】

                     
ちいさな独裁者【シュバルツヴァイス完全版】 [ マックス・フーバッヒャー ]
評価:3

■ヒトコト感想
世界大戦におけるドイツ兵のとんでおない行動が実話をもとに描かれている。戦いのさなか逃げ出したヘロルト上等兵は、軍用車両の中からナチスの大尉の軍服を見つけ、それを盗み出してしまう。見た目は立派な大尉となり、行動までもそれにともなうようになる。大尉としてヒトラーから特命を受けたとうそぶくヘロルトだが、その凛とした態度に周りの将校すらもだますことに成功する。

偶然現れたドイツ兵たちに敬礼され、周りからも恐れられるにしたがって、ヘロルトはその行動をエスカレートさせていく。ドイツの脱走兵たちを簡易裁判と称してその場で処刑する。ヘロルトはその力をより行使することになり、ドイツでその素性がばれたとしても、そのまま大尉として行動するというのがすさまじい。

■ストーリー
1945年4月。ソ連軍の攻勢によって敗色濃厚のドイツ。命からがら部隊を脱走した兵士ヴィリー・ヘロルトは、打ち捨てられた軍用車両を発見する。その車両にてナチス将校の軍服を見つけたヘロルトは、寒さを凌ぐ為にそれを身に纏うと、偶然現れた上等兵フライタークに敬礼され、彼が自分に従い始める。これを機に大尉に成りすます事となったヘロルトは、その場に居た兵士を従え、親衛隊を結成させるのだった…。

■感想
ただの上等兵でしかないヘロルトが大尉の軍服を着ることで、いつのまにか大尉になりきってしまう物語だ。序盤では正体がバレる危機にハラハラドキドキしながらも、大尉として部下を叱咤しながら脱走兵たちを処刑していく。

なぜハロルトがここまで徹底して脱走兵たちを処刑したがるのかはわからない。捕虜収容所の責任者が適切な裁判を経て、といったとしても、ヒトラーからの特命ということで、死刑を執行しようとする。責任者が各所に問い合わせをすると、いつの間にかハロルトにその権限があるとなるのが不思議だ。

ヘロルトはひたすら死刑執行人として、ナチスに敵対する住人や軍人たちを処罰していく。ヘロルトとその部下たちは、ヘロルトの常に強気な態度に触発され、かなり強引な手段にでている。ナチスの正当な将校と相対してもヘロルトは見劣りしない。

ヒトラーから特命を受けたというその言葉で、ほかの将校すらも圧倒している。ただの上等兵であるヘロルトがここまで将校としての行動がとれるのは、もともとの素養があったのだろう。誰もがヘロルトのことを将校として疑わないのがすごい。

ついにヘロルトの正体がバレ、ドイツ国内で裁判をうけることになる。将校のふりをして脱走兵たちを処刑しつづけた悪魔のような男。ただ、敗戦濃厚なドイツの幹部たちは、ヘロルトの将校としての素養を見抜きそのまま大尉として前線へ復帰させることを提案する。

本作がすべて実話ということに驚いた。ヘロルトはそのままイギリス軍にとらえられるまで、将校として実力を発揮したようだ。ただの上等兵が権力を手にして、浮かれるどころかより厳しい対応にでる。

実話ということが信じられない。



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