ザ・フォール/落下の王国


 2021.2.9      空想の中の美しい物語【ザ・フォール/落下の王国】

                     
ザ・フォール/落下の王国 特別版
評価:2.5

■ヒトコト感想
撮影中にケガをして入院中のスタントマンと、腕を骨折して入院している少女の物語だ。基本はスタントマンが語る物語を少女が興味深く聞いていく中で、語られる物語が映像化されていく。当然ながらスタントマンが作った物語なので荒唐無稽だ。作られた物語の映像がすばらしい。

カラフルな映像であり、登場人物たちの個性もありえないくらいすばらしい。黒人、インド人、仮面をかぶった男など統一性がない。砂漠のど真ん中での物語であり、何かを教訓としているようで、そうではない。復讐のために立ち上がった男たち。作り話ではあるが、その物語に突如として少女が入り込んでいる。スタントマンの作り話にのめりこみすぎる少女。結局、少女とスタントマンの作り話は最終局面まですすむのだが…。映像のインパクトがすさまじい。

■ストーリー
映画の撮影でケガをし、主演俳優に恋人を盗られ生きる希望を失っていたスタントマンの青年と、腕のケガで入院中の少女が、青年の作った物語で心を通わせていく姿を描いた作品

■感想
スタントマン青年と少女との交流が描かれている。序盤では入院することに不満たらたらのスタントマンと、騒いでいるスタントマンに興味を示した少女がだんだんと近づいていく。スタントマンが語る作り物の物語は、少女の興味をかきたてる。

スタントマンは少女にモルヒネを盗んで来るように依頼し、少女は無垢な瞳でそれを受け入れモルヒネを盗んだりもする。少女はスタントマンの話が聞きたいがために、ひたすらスタントマンの元に通いつめる。このふたりの関係は特殊だからこそ面白さがある。

スタントマンが語る物語は特殊だ。登場人物たちは原色の衣装を身に着け、砂漠のど真ん中で復讐の話し合いを続ける。上半身裸の黒人と頭にターバンを巻いたインド人。マスクオブゾロのような仮面をかぶった白人。

カラフルな街並みや復讐者の屋敷には豪華ですばらしい別荘のようなものがある。小高い丘の上から街を見下ろすと、青一色で埋め尽くされた町が見える。幻想的な雰囲気に満ちている。作り話なので物語の整合性はどうでもよい。突如として仲間が次々と殺されていく場面であっても、理不尽な思いはない。

スタントマンの作り話にのめりこむあまり、少女は作り話の中に入り込んでいる。マスクをかぶった男を父親と慕いながら、父親とまったく同じマスクをかぶる少女。小さく少し小太りな少女がマスクをかぶり動きまわる。それだけでコミカルな雰囲気に満ちている。

結局は作り話なので、ラストはどうでもよいのかもしれない。少女は退院し、スタントマンも無事退院して映画業界に復帰する。エンディングでは白黒の映像が流れるのだが…。当時の映画撮影はすべてスタントマンが生身の体で演じていたと思うと衝撃をうけてしまう。

映像美が印象的な作品だ。



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