2020.3.11 共感の押し売りは辛い 【倒れるときは前のめり ふたたび】
倒れるときは前のめり ふたたび [ 有川 ひろ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
有川ひろのエッセイ集第2段。エッセイと書下ろしの2つの短編から構成されている本作。エッセイでは相変わらず作者の強い主張が前面に押し出された作品となっている。ネット上での批判に対してかなり敏感に反応している。そして、あからざまなアンチよりもファンの方がたちが悪いと語る。「がっかりしました」という言葉で、自分と好みの違う作者に対して意見するネットの言葉に強烈に反発している。
エゴサーチをして辛らつな言葉を目にすることのストレス。さらにはエゴサーチをしないというのも実はかなりパワーを使うことらしい。売れっ子作家なので、それなりにアンチがいるのはしょうがないことなのだろう。それらにエッセイとして反論していることが、作者のこだわりの強さを感じた。
■ストーリー
書き下ろし掌編「彼女の本棚」と、中編小説「サマーフェスタ」を特別収録! 愛する本たちへの想い、ネット時代に思うことなどのほか、ペンネーム変更の理由も語られる。稀代の人気作家のエッセイ集第2弾。
■感想
作者のエッセイはかなり主義主張が強い。ネット時代だからこそ思うことがある。親切の押し売りや正義の味方など、ネット上に当たり前に存在している人々に対して声を大にして抗議している。確かに作者の言うことはもっともなのだろう。
有名人なだけに心ない批判もある。印象的なのは、エゴサーチをしないことにもパワーを使うという部分だ。アンチよりも作者のファンと言われる人々の方がたちが悪いらしい。自分と同じ好みでなければ気がすまないファンたち。がっかりしました、という言葉で、作者自身が悪いような印象を与えるファンの言動は確かに良くない。
ネット上での誰でも相手に対して物申すことができる環境は有名人にとってはかなり厳しいものだ。匿名であれば何でも言える。相手は有名人なので発言に責任がある。いう言う方は何の責任もない。となると、もめるのは当たり前だ。
ツィッターの捨てアカウントで作者に対して何か要求を出す。それは、作者の知名度を使って、偽善的な行いを依頼するようなものらしい。最低でも自分が普段から使っているツィッターのアカウントで送るべきだろう。捨てアカウントはさすがにありえない。
本作には2つの短編も収録されている。印象に残っているのは高知に住む学生が進学を機に遠距離恋愛し、その後、別れにいたるまでの物語だ。女が一度でも進学のために高知の外にでると戻ってくるのが難しくなる。地元に残りたければ大卒よりも高卒の方がよい良いという考え方なのだろう。
地方の女子の就職の厳しさをこれでもかと描いた作品だ。男の方がトントン拍子にうまくいき、高知県庁へ勤務できるまでになればなおさら、女との格差が浮き彫りになってしまう。
作者の芯の強さが表現された作品だ。
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