旅ドロップ 


 2020.1.7      非日常を楽しむ旅エッセイ 【旅ドロップ】

                     
旅ドロップ [ 江國 香織 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
旅を中心としたエッセイ集。作者はどのような旅をしてきたのか。イメージ通り、優雅な旅のように思えた。絶対にヒッチハイクや貧乏旅行をするようなタイプではない。優雅にワインを飲み美術館へ通い、そしておいしい食事をする。若いころの旅については多少無茶なことをしつつも、それをアクシデントとして楽しんでいる。

英語が多少話せたとしても、電車での移動の困難さや困った時にどうするかなど、ちょっとした旅エッセイが面白い。特に、電車を乗り換えて船に乗ると思っていたら、電車ごと船に乗せられて移動するというのは驚きだ。ついつい日本の常識で考えてしまうので、急いで電車から船に乗り換えなければ、なんて思ってしまうのも当然だろう。

■ストーリー
旅をした場所と空気、食べ物、そして出会った人々や動物たち―このエッセー集は、ちいさな物語のようだ。時も場所も超えて、懐かしい思い出に、はるかな世界に連れ出してくれる。エッセー37篇のほか巻頭に詩を三篇収録。

■感想
旅でおいしいものを食べ、見たこともない景色に出会い、新鮮な人との出会いを感じる。元はJR系の雑誌に連載されていたエッセイらしいので、旅の魅力が存分に語られている。旅だからこそ感じることもある。

旅先で食べたウェハースがとてもおいしかったので、お土産として買って帰り家で食べるとそうでもなかったり。旅先のその場所や一緒に飲む飲み物によってもウェハースのおいしさは変わるのだろう。その場でなければ、おいしかったウェハースの味は二度と再現できないのかもしれない。

旅が好きで、旅先では思いっきり楽しんだとしても家に帰ってくると「あー、家があってよかった」と作者の母親はよく言っていたらしい。この気持ちはよくわかる。旅は非日常を楽しむもの。それは安定した日常があるからこそ楽しめるものなのだろう。

毎日住む場所にも困るような生活をしていたとしたら、たとえ一時期でも旅にでたとして、その旅を心底楽しむことはできないだろう。常に帰ってからの心配をしなければならないからだ。また毎日非日常を過ごすのも辛いので、家が一番良いという定番の言葉が生まれるのだろう。

旅、特に異国の言葉が通じない場所への旅はちょっとしたことでもかなり楽しめる要素がある。アイスクリームを試食する際にも、言葉が通じないために次々と試食させられたり。言葉が通じないアクシデントを楽しむことができれば一人前の旅人だろう。

旅先での移動では、少し普段と違ったり、周りが動き出すと自分たちも移動しなければならないのか?なんていう不安感が襲ってくる。気候や空気感は旅先でなければ味わえない。旅の魅力がつまっているエッセイ集だ。

旅エッセイとしての楽しさが詰まっている。



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