2020.7.25 教会というタブーに切り込む新聞記者【スポットライト 世紀のスクープ】
スポットライト 世紀のスクープ
評価:3.5
■ヒトコト感想
アメリカにおける教会の重要性はよくわかっている。本作はそんな教会のスキャンダルに、新聞社が挑む物語だ。本作が実話に基づいていることに衝撃をうけた。神父による児童虐待が当たり前に行われていた。アメリカ国民たちは外聞を気にし、教会というタブーにふれることを怖がる。誰もが避けてきたことをスクープとして描くスリルはすさまじい。
印象的なのは、教会を信じてきた祖母の目の前で自分が取材した記事を見せる場面だ。昼夜たがわず取材しスクープを得る系の物語は好きだ。ひとつのスクープにかける熱量と、他の何者にも代えがたい強烈な正義感。数十人もの神父による虐待が行われていたということは、被害者はその数倍にもなる。すさまじい状況だ。
■ストーリー
暗闇にひときわ輝く、希望の光-2002年1月、米国の新聞『ボストン・グローブ』が、カトリック教会の信じがたい実態を報じた。数十人もの神父による児童への性的虐待を、教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。その許されざる罪は、なぜ長年黙殺されたのか。《スポットライト》という名の特集記事を担当する記者たちは、いかにして教会というタブーに切り込み、暗闇の中の真実を探り当てたのだろうか?
■感想
教会の神父による児童虐待事件の真実を探る。実際にボストングルーブ社がスクープした大スキャンダルを描いている。十年以上もの前の嫌な記憶を掘り返すことを拒否する被害者たち。アメリカでは教会は聖なるものという存在なのだろう。
神父がそんな悪事を働くはずがない、という思いこみ。ひとりの神父だけを糾弾しても意味がない。児童虐待を行う神父が世間には大量に存在し、それを教会が隠している。すべてを明るみに出すために新聞社の記者たちが走り回る。
ひとりの神父のスキャンダルを見つけたとしてもそれで終わるわけにはいかない。教会がらみの証拠をあげるために記者たちは動き出す。家庭を犠牲にしプライベートはなく、昼夜構わず取材を続ける。そのパワーあふれる展開というのは見ていてワクワクしてくる。
一つのことを成し遂げるため、皆が協力する行動には、強烈な熱量を感じることができる。聖職者である神父のスキャンダル。目の前で児童虐待を目にし、自分の子供がターゲットにされたとしても、見て見ぬふりをした大人もいたことだろう。
すべてが実話ということに驚かずにはいられない。エンドロールで流れる、被害を受けた州の名前が登場してくるのだが、その量には圧倒されてしまう。寡黙な編集局長が指揮をとり、熱い記者たちが必死にスクープを手に入れようとする。
教会というアンタッチャブルな部分へと切り込んでいくためには、相当な困難が待ち受けているはずだが、それを吹き飛ばすエネルギーと巨悪に負けない信念がある。記者たちは自分の手柄にしたいというよりは、正義のためにという思いが強いのだろう。
真実にもとづいた、強烈にインパクトのある物語だ。
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