スケルトン・キー 


 2019.1.8      強烈なサイコパスだ 【スケルトン・キー】
                     
スケルトン・キー[ 道尾 秀介 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
サイコパスの物語。どんな状況でも平常心でいられる男。サイコパスのイメージは、異常者のイメージだ。何か気に入らないことがあると、怒りがエスカレートして殺してしまう。最初は週刊誌のスクープを手伝う仕事をしていた錠也だった。どんな状況でも平常心でいられる男なので、仕事の能力は高い。

一般常識に照らし合わせると異常者だが、ある部分では特化している男。自分の母親を殺した男を見つけた際には執念で復讐をはたす。そして、自分の正体に気づいた女もあっさりと殺してしまう。さらには…。まさに現代のサイコパスの姿がここにあるのだが、中盤以降で隠された仕組みが明らかとなる。ただのサイコパスの物語ではないことは確かだ。

■ストーリー
週刊誌記者のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。この仕事を選んだのは、スリルのある環境に身を置いて心拍数を上げることで、自分の狂気を抑え込むことができるからだ。最近は、まともな状態を保てている。でもある日、児童養護施設でともに育った仲間から電話がかかってきて、日常が変わりはじめた。これまで必死に守ってきた平穏が、壊れてしまう―僕に近づいてはいけない。殺してしまうから。あなたは死んでしまうから。

■感想
序盤では、錠也のサイコパス具合がまろやかに描かれている。心拍数をコントロールすることで狂気を抑え込むすべてを知る。児童養護施設で育ち、施設時代では何をするかわからないと恐れられていた男。サイコパスとしての片りんを見せてはいるが、それでも日常には紛れていた。

それが、親友の父親が、実は自分の母親を殺した相手だと知ると、そこから錠也の行動は極端に変わっていく。サイコパスの恐ろしさは、いちど思い込んだら制御がきかず、ひたすら自分の目的のために邁進するということだ。

作中ではサイコパスであるからこそ成功した者たちのエピソードも語られている。スティーブ・ジョブズがサイコパスであるならば成功者の典型だろう。何かひとつの目的のためには、手段を選ばずにひたすら突き進む。その推進力に関してはサイコパスならではなのだろう。

錠也がサイコパスではないかと語る女に対して、錠也はある行動にでる。物語としては、錠也はサイコパスという刷り込みがなされているので、その後の行動の数々はサイコパスである錠也が行ったと疑いはなくなる。

物語は中盤から大きく変化していく。サイコパスである錠也がまるで別人格があるように語り始める。「あいつが殺した」なんてことをつぶやき始めると、読者はサイコパスでありいくつもの人格を持つパターンかと思ってしまう。

ある程度想定できる流れだ。それが、実は大きな思い込みであるとわかる。サイコパスだから行動を起こしたと思われがちなのだが、実は違った要素がある。強烈なインパクトがあるのは、錠也に対しての新たな真実が判明した時だ。

サイコパスを描いた作品としては、かなり強烈だ。



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