SPINING KITE スピニングカイト


 2020.7.12      木更津を舞台にした青春物語【SPINING KITE スピニングカイト】

                     
SPINNING KITE スピニング カイト [ 中村倫也 ]
評価:3

■ヒトコト感想
東京アクアラインが開通する時期の木更津の若者たちを描いた作品だ。十九歳の青年たちがパンクバンドを組んでうまくいかない日常を嘆いている。みな家族や兄弟との折り合いが悪く、居場所がないことからバンドにのめりこむ。それぞれの家庭の事情がわりとメインに描かれている。兄が優秀で自分が落ちこぼれ。家族の中で自分だけがつまはじきにされている。家が貧乏でどうにもならない者。

バンドの晴れ舞台である湊まつりの会場に、トラブルからこれなくなった元暴走族のキドがその後、別のバンドでブレイクする。残された者たちは…。木更津という場所がより強くもの悲しさを感じさせる。アクアラインの開通で騒ぐ世間をよそに、しんみりとする青春物語だ。

■ストーリー
千葉県木更津市。ジュン、ブンジ、キド、マキは中学時代からのくされ縁。四人は、パンクバンドを組んでいたものの、十九歳の今となっては、各々が事情を抱えている。予備校に通うふりをしながら、バンドを続けているジュン(中村倫也)。両親や兄と折り合いが悪く、一人暮らしをしているブンジ。バンドに暴走族と我が道をいくキド。父のせいで、高校も、そしてバンドをすることすらも叶わなくなったマキ。毎年お盆に開催される『港まつり』が、このメンバーでの最後のライブだ。しかし当日、事件が起きる。最後のライブに臨むジュン達の元にベースのキドが来ない。キドは確執のあった暴走族の連中と乱闘騒ぎを起こしていたのだ・・・

■感想
ジュン、ブンジ、キド、マギの四人はパンクバンドを組んでいる。高校を卒業して、お決まりどおり進路に悩みながらもバンド活動に逃げている。それぞれが家族とうまくいっていないこともその要因のひとつなのだろう。ジュンの家庭はわりと普通でグレる要素はないはずなのだが、家族の中でジョンだけが疎外感を感じているようだ。

父親だけはジュンを理解しているようだが…。大学へ進学して東京にでてからでもバンドはできるのでは?という妹の言葉が一番真実をついている。

ブンジやキドは家庭になんらかの問題がある。特にブンジはよくできる兄の元で常にコンプレックスを背負いながら生きてきたのだろう。兄に対する反発の気持ちが強い。マギは家が貧乏で幼稚園生のような弟がいるのを見ると、両親が若いころに過ちでマギを妊娠してしまったのだろうと想像がつく。

みなが何か問題を抱えながら、バンド活動にいそしむのだが…。キドは元暴走族ということで、族の昔の仲間から狙われたりもする。このちぐはぐな感じがありながらもバンドを続けているが、キドが少年院に入ったことで変化が訪れる。

月日が経ち、キドが別のバンドで売れっ子となっていることを知るジュンたち。そこでジュンはやりきれない思いを爆発させる。東京にでるわけでもなく、地元木更津に残るジュン。方やキドはいつのまにか全国区のスターとなっていた。

いつまでも木更津に居続けるジュンの心境はかなり微妙だ。アクアラインができたことで変化があるかと思いきや…。ジュンのような心境の若者は世の中に沢山いるのだろう。結局、ジュンはまじめに就職し、ブンジはできちゃった婚をし、キドはまじめに働く。このパターンにおさまるのが普通だ。

木更津を舞台にした青春物語だ。



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