空の青さを知る人よ


 2021.5.28      大人になった自分を見て、高校生の自分は何を言うのか【空の青さを知る人よ】

                     
空の青さを知る人よ
評価:3

■ヒトコト感想
山に囲まれた町で繰り広げられる奇妙な物語。主人公は高校2年のあおい。ベース好きの女子。13歳差のあかねという姉がいる。あおいがベースを練習しているお寺のお堂で、突如として高校時代の姉の恋人であった慎之介と出会う。慎之介は高校生の姿であり今のあおいとは同級生のように見える。本来なら30歳の慎之介の生霊がお堂内限定で現れる。

現在のあかねや現在の慎之介を含めた複雑な物語となっている。高校生の慎之介が現在の慎之介の状況に幻滅するのは強烈だ。田舎町が舞台ではあるが、背景がすさまじく印象的だ。まるで写真のような背景が続く。キャラクターはアニメだが、背景のみ特殊なのだろう。タイムパラドクスを無視した奇妙な青春物語だ。

■ストーリー
山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。

姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして、ある男の名前が発表された。金室慎之介。あかねのかつての恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えてくれた憧れの人。高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が、ついに帰ってくる…。それを知ったあおいの前に、突然“彼"が現れた。“彼"は、しんの。高校生時代の姿のままで、過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。

思わぬ再会から、しんのへの憧れが恋へと変わっていくあおい。一方で、13年ぶりに再会を果たす、あかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。

■感想
冒頭、高校生のあかねと慎之介は恋人同士でお堂の中でギターの練習をしている。それを眺めるのは幼児のあおい。この幸せな状況が一変するのはあかねたちが卒業する時だ。東京へ行きミュージシャンとして一旗上げたい慎之介。あかねはあおいの面倒を見るために田舎に残る。

複雑な状況ではあるが、田舎の美しい風景がまるで写真のような背景として描かれている。時が経ち、17歳のあおいはベースを弾き続ける。慎之介の影響をうけてのベースだが、あおいはベースにのめりこみ始めている。

お寺のお堂であおいがベースを練習していると、高校生の慎之介が目の前に現れる。ここで過去の慎之介の生霊とあおいが出合う。現在の慎之介は死んだわけではない。この奇妙な慎之介に恋をしてしまうあおい。複雑な状況だ。

あかねは30歳になっている。姉と別れた慎之介が過去の姿そのままにあおいの目の前に姿を現す。今のあおいであれば高校生の慎之介とつりあう。過去の慎之介があおいから今の状況を聞いて混乱するのはもっともだろう。さらに強烈なのは、現在の慎之介が演歌歌手のお抱えギターとして田舎に凱旋してくる部分だ。

高校生の慎之介、あおい、30歳のあかねと慎之介。この4人が一堂に会するのは複雑な状況だ。あかねからすると高校生の慎之介は懐かしいだけ。現在の慎之介もうらぶれた感じで、決して成功者としての雰囲気はない。大人の慎之介と高校生の慎之介が言い合いをする場面は強烈だ。

高校生からすると今の慎之介は最も見たくない自分の姿なのだろう。何でもできると思い込んでいた高校生からすると、現実を見せられた感じなのかもしれない。大人の慎之介からすると高校生の自分は何もわかっていない勝手なガキだという思いなのだろう。

大人になった自分が高校生の自分に何を言うべきか。高校生の自分に言われて痛いことは沢山ありそうだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp