2021.1.13 平凡な容姿だが男を引き付ける香りをもつ女 【嫉妬の香り】
嫉妬の香り / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
恋人が浮気をしているのではないかという嫉妬心から壊れていく男の物語だ。男にはミノリという恋人がいたのだが、仕事相手の政野がミノリに興味をもっていることを感じる男。自分と相性が良い恋人を狙う男が身近にいるのは心中おだやかではないだろう。その状態で仕事を続けながら、ミノリが政野に興味を示さないかと気が気ではない。
それは政野の妻である早紀も同じ気持ちだった。それぞれパートナーが浮気しないかと心配する同士が結託し、いつの間にか男と早紀の方がくっついてしまう。嫉妬に狂った男の末路は、ただおかしくなっていくしかない。パートナーが未来に浮気をするからと、その復讐として先に浮気をするというわけのわからない状態となっている。
■ストーリー
恋人との穏やかな日常に、突然生じた疑惑。彼女は自分を裏切り、あの男と愛しあっているのではないだろうか?身を苛む嫉妬。崩壊して行く関係。それでもなお彼女の放つ香りは理性を奪い、「私」を虜にする。そして、白い花の香りをまとったもうひとりの女―。欲望?それとも愛なのか?「香り」を通奏低音に、愛についての張りつめた問いが続く、狂おしく、ピュアな恋愛小説。
■感想
ありもしない妄想から嫉妬心が生まれ、そして壊れていく物語だ。パートナーと一緒に大きな仕事にチャレンジする男。それぞれの得意分野を活かし、充実した仕事を続けていたのだが…。プロジェクトのトップである政野がミノリに興味を示し始めた。
ミノリは容姿は平凡だが独特の香りをもち男を引き付ける。見た目はそれほどでもないのに、なぜか男を引き付けるタイプなのだろう。政野が明らかにミノリに興味を示していることに男はいら立ちを感じ始める。
政野の妻である早紀もそのことに気づき始め、男と共闘しようとする。まだ政野とミノリは浮気をしていないが、将来浮気をされることを考え、先取りで男と早紀は関係をもとうとする。異常な心理状態なのだろう。
お互いがパートナーに裏切られたという思い込みから不倫に走る。結局のところ、そこには何の解決策も生まない。ただ罪悪感だけが生まれるだけだ。そんな状態でパリで生活する男と早紀。いつの間にか、男は精神的に追い込まれていきおかしくなっていく。。。
嫉妬心というのはとてもやっかいだ。男や早紀が一度思い込むと、どんなことでも脳内でバイアスをかけてすべてが不倫へとつながるように見えてくる。男と早紀の関係が崩壊したとしても、後には言いようのない後悔の気持ちしか残らない。
嫉妬心が人を狂わせるのは良く聞く話だ。本作はその極端なパターンであり、さらには香りがどのように人に変化を与えるかも描かれている。どんな香水よりも男を引き付ける魅力的な香。強烈なインパクトはないのだが、嫉妬の恐ろしさが伝わってきた。
嫉妬心からは何も生れないのだろう。
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