心霊ドクターと消された記憶


 2018.4.17      上質な心霊ミステリー 【心霊ドクターと消された記憶】

                     
心霊ドクターと消された記憶 [ エイドリアン・ブロディ ]
評価:3

■ヒトコト感想
精神分析医のピーターは、患者たちと面談するにつれ、おかしな現象に直面する。ピーターのバックグラウンドは娘を不幸な事故で亡くし精神的に弱っているという設定だ。そこから心霊現象的なことが起こり始め、ピーター自身が奇妙な状況に気づき始める。

ポイントはピーターが過去の事を忘れているということだ。自分の患者たちがピーターの故郷で発生した列車事故で亡くなった者たちだということに気づくと、そこから謎は解け始めてくる。ミステリアスな展開は秀逸だ。謎が謎を呼び、心霊現象がピーターの記憶を甦らせることに一役かっている。霊たちがまるでピーターに真実を告げるかのように、様々な動きをする。

■ストーリー
娘を亡くし悲しみを拭いきれない精神分析医のピーター。普段の生活を取り戻そうと、患者たちとの面談を徐々に再開し始めた。ある日エリザベス・ヴァレンタインという患者ではない少女がやってきて1枚のメモを残していく。そのメモを調べていくと、自分の患者たちが全員1987年の7月12日にピーターの故郷で起きた列車事故で亡くなっていたという事実を発見する。

亡霊たちに導かれ、ピーターは20年間封印されてきた秘密を解き明かしに故郷へと向かう。そこで、10代のときピーターは乗客47名が死んだ列車の脱線事故に関与していたことを思い出す。自分の記憶が塗り替えられていたことに愕然とするピーター。さらに、亡霊たちはあの夜の記憶の深淵をピーターに覗かせ、彼は徐々に記憶を取り戻していく。

■感想
ピーターは娘を亡くしたことがトラウマとなり、おかしな現象に悩まされる。エリザベスという少女が患者としてやってきてから、おかしな現象はエスカレートする。この段階では、ピーターの精神がおかしくなり、幻覚を見ている可能性もある。

観衆はたんなる心霊現象とはとらえずに、何かしら秘密があると想定しながら見ることになる。ピーターが次第にやつれていき、謎を解くことに必死となる。強烈なのは、ある人物から紹介された患者が、全て列車事故の犠牲者だとわかる場面だ。

ピーターの目の前に現れるのが列車事故の犠牲者たちだと知ると、そこからピーターの幼いころの記憶が甦ってくる。この段階で、列車事故にピーターが関わっていたことが判明する。幼いころの衝撃的な記憶をピーター自身が封印していたということなのだろう。

ただ、物語としてはこれだけでは終わらない。列車事故はピーターのせいだけではないという流れとなる。事故やエリザベスが死んだ原因など、すべてはピーターの記憶にかかっている。そして、このあたりから誰が真の犯人かはうっすらと想定できる。

ラストの流れはなんだか物悲しい。霊たちが真犯人を教えてくれたという流れなのだろう。因果応報と言えるのかもしれない。幼いころの強烈な経験は、自分を守るために脳が記憶を奥深くに隠してしまうこともあるのだろう。霊的な恐怖というのはない。

謎が徐々に明らかになっていく過程は面白い。ピーターと、列車事故で母親を失った女警官が真犯人を追い詰める。心霊ミステリーとでも言えばよいのだろうか。娘を亡くし精神的に衰弱しただけかと思いきや、真実は別のところにある。

上質な心霊ミステリーだ。



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