先生と迷い猫


 2019.3.30      偏屈な老人と猫の交流【先生と迷い猫】

                     
先生と迷い猫 豪華版 [ イッセー尾形 ]
評価:2.5

■ヒトコト感想
定年退職した校長の恭一とノラ猫のミイの物語。頑固で堅物な恭一と、ミイを通して近所の人たちとの交流が始まる。恭一は見るからに典型的な頑固おやじだ。元校長先生らしく、規律にうるさくくそ真面目だ。そんな恭一だけに、近所の人たちからは変わり者扱いされている。

ミイはただのノラ猫だが、様々な人がミイと交流することで救われていく。ボケはじめた祖母の面倒を見るのに嫌気がさしてきた公務員。恭一はミイのことを最初は邪魔者扱いしていたが、いつの間にかなくてはならない存在となる。そして、少しの間ミイの姿が見えないと、それだけで必死であたりを探し回ったりもする。定年し妻にも先立たれた男というのは、何かで大きく変わる可能性がある。

■ストーリー
定年退職した校長先生、森衣恭一は妻に先立たれて一人暮らし。その堅物さと偏屈さから近所では浮いた存在だ。訪ねてくるのは亡き妻が餌を与え、かわいがっていた三毛猫・ミイくらい。猫が好きではない先生は、何とか追い払おうとするが、ミイはどんなに追っ払っても毎日やってきて、妻の仏壇の前に座っているのだった。しかし、ある日突然、姿が見えなくなる。そうすると何故か心配になり探し始めると、自分の他にも、ミイを探している人達がいることが分かる。

皆、ミイに餌をやり、語りかけることで、どこか救われていた人たちだった。彼らと関わっていく中で、先生の頑なな心が変化していくーーミイの存在が思い出させる妻のこと。忘れてしまわねばならないと思っていたこと。なくしてからでは伝えられないことーー必死で捜す校長先生に小さな奇跡が起きる。

■感想
恭一はその堅物さ加減から、近所で嫌がられているわけではないが、変わり者扱いされている。序盤で堅物エピソードとして、常連のパン屋のエピソードがある。原材料費の高騰から安いバターを使ったパンを作ったところ、恭一にあっさりと見破られてしまう。

その恭一の堅物具合により、パン屋は廃業を決意する。人の人生を変える程、恭一には強烈なパワーがあるのだろう。近所から校長先生と慕われてはいるが、くそ真面目な雰囲気は融通の利かないめんどくささがあるのは間違いない。

恭一の家にやってくるノラ猫のミイ。どれだけ追っ払っても必ず戻ってくる。それも妻の仏壇の前に座っている。まるで亡くなった妻の生まれ変わりのように。偏屈で周りとうまくやることが難しい恭一に、妻がミイとなり助けているような雰囲気すらある。

ミイを介することで、恭一は様々な人たちと交流ができている。普段ならば敵対関係にありそうな人物さえ、ミイにより仲良くなっている。恭一だけでなく、ミイによって助けられた人々は多数いる。

印象的なのは、父親とばあちゃんと三人暮らしの公務員の男だ。恭一が趣味で撮影した写真を、歴史的に貴重なモノとして保存している男。ばあちゃんがボケはじめており、突如徘徊したりもする。

ボケたばあちゃんの面倒に嫌気がさしていたころ、ミイが現れ、ばあちゃんとミイの交流を目にする。ミイは人が忘れかけていた優しさを思い出させる力があるのだろうか。恭一は、亡くなった妻を思い出す。口うるさいがずっとそばにいてほしかった存在なのだろう。

ミイも、恭一にとってはなくてはならない存在になっている。



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