戦国自衛隊1549 


 2020.3.20      戦国時代で生き抜く力 【戦国自衛隊1549】

                     
戦国自衛隊1549 / 福井 晴敏, 生頼 範義
評価:3
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■ヒトコト感想
戦国自衛隊と言えば、はるか昔にテレビで映画版を見たことがある程度だ。本作は福井晴敏が新しい戦国自衛隊として描いた作品だ。現代の高性能兵器をもつ自衛隊が戦国時代へタイムスリップしたらどうなるのか。最初は圧倒できても、いずれ物資が不足し戦国武将たちの数の前にやられるしかない。ただ、本作は別の観点で描いている。

もし、知識があり先を見通せる力をもった者が司令官として存在したのならば、戦国時代でも生き残ることができる。さらには織田信長に成り代わり天下統一までも。。。ガソリンを生成するなどしながら、現代の兵器を使い続け、薬物で恐怖を感じない兵士を作る。歴史を変えようとする男と、歴史を元に戻そうとする者たちの戦いだ。

■ストーリー
アクエリアス計画―太陽の強力電磁波から、情報・通信回路をシールドする前代未聞の実験。その実験中に、的場丈史一佐が司令を務める、陸上自衛隊・第三特別混成団が忽然と消えた―。入れ替わりに過去の空間が、戦国時代の騎馬武者とともに共に現代に出現した。第三混成団は過去の世界に飛ばされてしまったのだった。

アクエリアス計画の開発に携わっていた神崎怜は、的場が作製した勝利不可能な図上演習において、唯一勝利を収めた鹿島勇祐を加え、第三混成団を現代に連れ戻す計画を立てる。いく行く先は1549年。天下を目指す群雄が割拠する戦国時代―。

■感想
戦国時代に最新兵器を自衛隊が持ち込んだらどうなるのか。このパターンは昔の戦国自衛隊でしっかりと描かれているのだろう。圧倒的な戦力により戦国時代の兵士たちをなぎ倒していた。ただ、物量の前にはどうしてもかなわない。

最初は無双していても、いずれは力尽きてしまう。本作はそのパターンではない。指揮官の的場は戦国時代で生き残ることを考え、まずは国を持ちそしてガソリンや兵士を増やす方法を考えている。そして6年の歳月をかけ的場は自分自身が織田信長に成り代わっている。

とんでもない状況だが、戦国時代の変化は現代にも影響をおよぼす。歴史が変わると現代が消滅する可能性があるらしい。タイムパラドックスを修正するために歴史は変化していくのだろう。となると、現代の者たちは的場を取り戻して歴史を正常にする必要がある。

面白い論理だ。ただもう一度戦国時代にタイムスリップすると、そこには織田信長となった的場がいた。歴史的には信長が天下を取るので、的場が天下をとることでも同じなのだろうが…。的場は意図的に歴史を改ざんしようとする。

戦国時代でも生き残る現代の自衛隊。それには理由がある。一番大きいのは薬物により恐怖を感じない兵士を量産できたことだろう。的場を追いかけ連れ戻そうとする鹿島との対決。それぞれが知力を振り絞っての戦いだが、歴史を味方につけた鹿島が最後には勝利する。

面白いのは、歴史自身が元の歴史に戻そうとする力が働くということだ。信長となった的場が死亡すれば、また新たな信長が登場してくる。そして、歴史は、誰もが知るとおり通りの流れとなる。

現代の人間が信長になるという驚きの展開だ。



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