サヨナライツカ 


 2020.11.23      女が別れた男のことを引きずるパターン 【サヨナライツカ】

                     
サヨナライツカ[ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
”好青年”と呼ばれる男・豊には、光子という婚約者がいるにも関わらず、バンコクで杏子という魅力的な女性と付き合う物語だ。この手の恋愛モノであれば、光子に浮気がバレるか、実は光子がすべてを知っていたというのが定番としてある。本作では豊は最後まで杏子の存在を知られることなく幸せな人生を送っている。

一時の浮気のあと、男は浮気相手の女を捨てて、良い奥さんになりそうな女を選ぶ。男の狡さが存分に表現されている作品だ。25年後に豊と杏子は再会するのだが、そこでの美しい思い出を語り合う場面がメインなのだろう。25年経ち、男は出世し幸せな家庭を築く。女は生涯ひとりで、最後はひっそりと癌で死んでいく。なんだかいたたまれない気持ちになった。

■ストーリー
「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」。“好青年”とよばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しくくるおしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説。

■感想
光子という婚約者がいながらバンコクで杏子と浮気をする豊。杏子が実は資産家と離婚し、莫大な慰謝料を手にしていたため、純粋な恋愛というよりは杏子の不思議さが勝っている。ホテルのスイートで生活する杏子。そこに通う豊。

光子がバンコクにいないことをよいことに、好き放題する豊。杏子が、豊に光子という婚約者がいることを理解しているのもポイントだろう。お互いが一時の遊びのつもりだったのだが、いつの間にか深みにはまりこむ二人であった。。。

杏子は離婚した元夫に、若くさわやかな豊を恋人として見せびらかしたかっただけのはずが、いつの間にかはまりこんでいた。豊が光子のもとに行くことを心苦しく思いながらも止めることができない。杏子のプライドがそれを許さないのだろう。

豊もすべてをぶち壊して、杏子のもとに走るほどの勇気もない。なんだかありがちな人間関係だが、お互いに強く依存しあっていないことがすんなりとした別れにつながるのだろう。ただ、それは後に強い後悔として残ることになる。

25年後に再会する豊と杏子。豊は光子と幸せな家庭を築き副社長にまで出世している。対して杏子の方は…。豊は杏子のことを忘れていたが、杏子は豊のことを思い続け、次の恋愛へとスタートできずにいた。なんだか意外なパターンだ。

女の方が新しい恋へとすぐにスタートできるイメージがあるのだが…。豊は結局のところうまくやったということなだろう。杏子の存在を最後まで光子に知られることなく過ごすことができている。25年後の再会を、恋愛小説として感動を引き起こそうとしているのだろうが…。豊の都合の良いように流れているような気がした。

恋愛小説として、珍しいパターンかもしれない。



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