2021.1.31 サカサマな重力で生活する恐怖【サカサマのパテマ】
サカサマのパテマ
評価:3
■ヒトコト感想
地上に足をつき空を見上げると、少女が空に向かって落ちていきそうになっている。地上で生活するエイジとサカサマ少女のパテマ。設定がすばらしい。サカサマ族は重力が逆になり、空に向かって落ちていく。そのことをイメージするとかなり恐ろしい。空に向かって落ちないためには、建物に入り天井に足をつくしかない。
地下で生活するサカサマ族と地上で生活するアイガ。エイジとパテマが抱き着く形になることで、お互いの重力で均衡が保たれ、ゆっくりと浮き上がったり下がったりする。現実的に考えて、足元に何もない、真っ逆さまに落ちる場所で誰かにしがみついていないと落ちてしまう。かなりの恐怖だ。設定がすばらしくオチもしっかりと考えられている作品だ。
■ストーリー
かつて、大異変が人類を襲った。そして、時は流れ…。夜明け直前の`空'を見上げる少年、エイジ。彼の住むアイガでは、「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と`空'を忌み嫌う世界であった。そこに、突然現れた`サカサマの少女'。彼女は、必死にフェンスにしがみつき、今にも`空'に落ちそうである。彼女の名まえはパテマ。地下世界から降ってきた。エイジが彼女を助けようと手を握った時、彼女に引っ張られるように二人は空へ飛び出した。
恐怖に慄くパテマと、想像を超える体験に驚愕するエイジ。この奇妙な出会いこそ、封じられた<真逆の世界>の謎を解く、禁断の事件であった。その頃、アイガの君主イザムラの元には、「サカサマ人」があらわれたとの報告が届く。イザムラは、治安警察のジャクに捜索を命じるのだった…。
■感想
大異変から重力が変わっていき、空に落ちていく人々が…。物語は地上で生活するアイガとサカサマ人の物語となる。序盤でパテマが地上に出てくる場面は強烈だ。空に向かって落ちていく。地下で生活していたパテマにとっては足元が無限に広がる空というのは恐ろしくて仕方がないのだろう。
普通に考えても、自分の足元に何もなく、ただ永遠と落ちていくイメージは恐ろしすぎる。エイジと抱き着く形で重力の均衡が保たれているのはわかるのだが。。。建物につかまるというのは、鉄棒につかまるのと同じでかなり腕に負荷がかかるのだろう。
アイガ族は、サカサマ族を滅ぼそうとする。そもそも地上をおかしなことにしたのは、サカサマ族のせいだと考えるアイガのボスであるイザムラ。サカサマ族が歴史的に悪としてアイガの子供たちは教育されている。このあたりで、オチをなんとなく感じることができる。
重力が逆転した理由は不明だが、サカサマ族が結局のところ正しい地上人だということがわかる。パテマとエイジの友情の中で、イザムラがおかしな絡み方をしてくる。サカサマ族の存在を公にすること以外に、パテマに頼られたいというよこしまな思いがイザムラにある。
序盤ではサカサマ族の気持ちを感じることができない。ただ、物語が進んでいくにつれて、空に落ちるということの恐怖を自分に置き換えて考えると、すさまじいと気づいた。足元に何もない状態で、エイジにつかまるしかない。エイジがもし手を離したりすれば、空に向かって落下していくだけ。
重力が均衡を保つことで、エイジとパテマがフワフワと浮いているシーンは強烈だ。サカサマ族は結局のところ地球では生きることは難しい。地下の空がない場所で生活するしかないのだろう。
かなり秀逸な設定だ。
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