最愛の子


 2019.2.10      すさまじすぎる中国の誘拐の実状 【最愛の子】

                     
最愛の子/ヴィッキー・チャオ[DVD]
評価:3.5

■ヒトコト感想
中国の子供誘拐の実情には衝撃を受けずにはいられない。本作は実話をもとに描かれているのだが、日本とは明らかにベクトルが異なっている。日本で誘拐というと身代金目的だが、中国では純粋に子供がほしいために誘拐するパターンがほとんどらしい。息子を誘拐された夫婦は、息子を取り戻すために様々な活動をする。その結果、中国の農村で息子を見つけ出せたのだが…。

まず、幼い息子は誘拐先の女を母親と認識する。そのギャップが強烈だ。女は子供が誘拐されて来たとは知らなかったためもめてしまう。農村部ならではの問題や、中国での一人っ子政策の話など様々な要因がある。子供の気持ちを考えると、何が一番良いのかはわからないのだが…。非常に強烈な中国の実情が描かれている。

■ストーリー
中国・深センの街なかで、ある日突然姿を消した3歳の息子ポンポン。両親は必死で息子を捜すが、その消息はつかめない。罪の意識と後悔に苛まれながら、かすかな希望を胸に捜し続けて3年後、両親は遠く離れた農村に暮らす息子を見つけ出す。だが、6歳になった彼は実の親を覚えておらず、“最愛の母"との別れを嘆き悲しむのだった。

そして、育ての親である誘拐犯の妻もまた、子を奪われた母として、我が子を捜しに深センへと向かう。再びその胸に抱きしめることを願って―。

■感想
息子が誘拐された。3歳の子供が誘拐され、農村で育てられていた。3歳だと、そこから3年程度たつと、元の家のことは忘れているのだろう。農村の生活を当たり前に思う息子ポンポンと、息子を取り戻したが懐かず苦労する親。農村の女は、夫が子供を誘拐してきたとは知らず、捨て子を拾ってきたと信じて育てる。そんな状態で突然警察に逮捕されるのは驚きでしかない。

農村の女からすると、突然息子を奪われた気分だろう。同じく捨て子を拾ってきたと妹も育てているが、その子とも離れ離れにされてしまう。

息子を誘拐された夫婦が主人公かと思いきや、後半は農村の女が主役となる。ポンポンのことはあきらめたとしても、施設に入れられた妹は取り戻したいと考える。そこで、いろいろと弁護士に相談するがすべて門前払いとなる。唯一助けてくれた弁護士をたよりに…。非常に複雑な作品だ。

中国の農村部の実情や、一人っ子政策の現実。同じように子供を誘拐された夫婦が、妊娠したことで出産許可を得るために行方不明の子供の死亡届を出さなければならない。なんだか悲しい現実だ。

本作がすべて実話をベースにしていることに驚いた。エンディングでは実際に報道された映像が使われている。俳優たちとは違う、強烈に素朴な感じだが、それゆえに心に響くものがある。農村の女は顔が赤茶けており、いかにも炎天下で農作業をし続けた雰囲気だ。中国の誘拐ビジネスの根深さと、現実。

当たり前に子供が売買される世界。そして、幼い子供は自分が誘拐されたと知らず、そこが自分の生家だと考え、生き続ける。この状況は強烈かもしれない。

日本では考えられない現実だ。



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