ランゴリアーズ 


 2018.5.7      姿の見えない恐怖 【ランゴリアーズ】

                     
ランゴリアーズ / スティーヴン キング
評価:2.5
スティーヴン・キングおすすめランキング
■ヒトコト感想
中編が2作収録された本作。表題作でもある「ランゴリアーズ」のみ強烈なインパクトがある。ジャンボ旅客機で目覚めると、周りの乗客は消えていた。何が起きたのかわからないが、飛行機は飛んでいる。まずはこの冒頭の状況がとんでもなく引きの強さがある。目の見えない女の子の視点や、ビジネスで大事な打合せのある男など、みな様々な理由を抱えている。

一部の者だけが大空を飛び続ける飛行機の中でとり残されることになる。ランゴリアーズというキーワードが非常に恐ろしいものに思えてくる。よく原理はわからないが、スティーヴン・キングのホラーの世界にとりこまれてしまう。もう一つの中編である「秘密の窓、秘密の庭」は、あまり印象に残ってはいない。

■ストーリー
ランゴリアーズ―ジャンボ旅客機で目覚めると、大半の乗客が消えていた…。秘密の窓、秘密の庭―「俺の小説を盗んだな」と言って付きまとう凶悪な男、実は…。

■感想
ジャンボジェットの中で目を覚ますと、周りにはほとんど人がいなかった。存在するのはある期間寝ていた人だけ。目の見えない女の子は、パニックを起こし、周りの乗客たちも自分たちの異常さに気づく。そこから状況を分析し、どうにかして事態を打開させるためにみなが協力する。

奇跡的にひとり残っていたパイロットが、旅客機を不時着させることに成功するのだが…。何が起きているのかわからないのが恐ろしい。そして、不時着した先では、食べ物は存在するが、味がまったくないなど、普通の状況ではないのが恐ろしい。

不時着してから目の見えない女の子だけが、何者かが近づく気配を感じている。何かとはランゴリアーズのことなのだが、この何かの存在により皆がパニックとなる。目が見えないだけに迫りくる恐怖には敏感なのだろう。恐怖から逃れるために必死に逃げようとする。

ランゴリアーズの正体は不明であり、また、食べ物に味がしなくなる理由もはっきりと語られることはない。ただ、恐ろしいものに取り込まれてしまうと、全てが味のない世界になってしまうということなのだろう。

ランゴリアーズから逃げ出すためには、様々な条件が必要となる。境目を越える時には眠っていなければならない。ランゴリアーズの恐ろしさもそうだが、この条件にしても本来ならまともに信じることはできないだろう。

常に危険と隣り合わせの状態で、どのようにしてランゴリアーズから逃げ続けるのか。そして、その先に以前と同じような平穏な日常が戻ってくるとは限らない。得体の知れない恐怖を描かせるとスティーヴン・キングの右にでるものはいないだろう。

ランゴリアーズは、小さな小人のようなものを想像してしまった。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp