レイルウェイ 運命の旅路


 2019.5.20      拷問した側もされた側も戦争の被害者だ【レイルウェイ 運命の旅路】

                     
レイルウェイ 運命の旅路 [ コリン・ファース ]
評価:3

■ヒトコト感想
過酷な戦争体験を経てきたエリックが、第二次世界大戦終了後、自分に拷問を加えた日本人と再会する。戦争時代の異常さと、日本軍の異常な状況がこれでもかと描かれている。若いころに激しい拷問を受け、日本人に対して激しい恨みの気持ちをもつエリック。戦争のトラウマから立ち直ることの難しさと、拷問を仕掛けた相手と再会した時に、どのような行動にでるのか。

相手は軍の通訳として働いていた永瀬だ。エリックからすれば、たとえ通訳と言えども自分に拷問を仕掛けた相手なだけに一生忘れることはできない。目の前に、普通に生活している永瀬がいたとしたら、どのような行動にでるのかはわからない。昔の仲間の自殺もまた、エリックを追い込む要因のひとつなのだろう。

■ストーリー
鉄道好きな初老の男性エリック・ローマクスは列車で美しい女性パトリシアと相席となり、一目で恋をする。彼女の方もまた、エリックに心惹かれる。間もなく2人の愛は深まり結婚式を挙げる。しかし幸せな日々は長くは続かなかった。エリックは若い頃に第二次世界大戦に従軍していた際の、過酷な戦争体験で負った心の傷に苛まれていたのだ。

そんな夫をパトリシアは何とか救いたいという一心で、エリックの退役軍人会の仲間フィンレイを訪ねて救いを求める。だが、フィンレイもまた戦争のトラウマから立ち直っておらず、同じ苦しみを抱えていた。そんな中、彼らの悪夢のような体験に深く関わる、日本人通訳だった永瀬が、今も生きていることを新聞記事により知る。

■感想
第二次世界大戦中に激しい拷問を受けた男たちの物語。東南アジアで日本兵に捕らえられたエリックたち。そこでは激しい拷問や強制労働が待っていた。情報がそこまで伝達されていない状況で、日本兵たちは日本が優勢と考えていた。

実際には日本はじり貧状態にあったが、その情報を日本兵は持っていなかった。エリックたちが独自にラジオを作成し情報を得ていたことから、スパイ容疑をかけられ拷問されることになる。本作を見ると、日本兵はまさに鬼のような存在に見えてくる。

エリックが拷問を受けるその傍らには若い永瀬がいた。日本兵がエリックから情報を聞き出すために拷問を行い、永瀬が通訳としてエリックを問い詰める。地獄のような日々を過ごすエリック。そして、その先には拷問により死にゆく仲間もいる。

エリックたちはラジオで戦争の状況を収集しており、日本軍が敗走していることも理解していた。そんな状態で、ついにエリックたちは救出されるのだが…。日本兵たちは犯罪者として裁判にかけられ罰せられることになるのだが、通訳の永瀬は、同じようにイギリス軍の通訳として日本兵の言葉を伝えることになる。

エリックからすると、たとえ通訳といっても永瀬のことを、自分たちを拷問したひとりとしか見ないだろう。そんな永瀬がなんの裁きも受けずにノウノウと生きており、自分たちを拷問したその地で、戦争の悲惨さを後世に伝える仕事をしていたとしたら、我慢ならないだろう。

エリックは永瀬に自分と同じ思いをさせようとする。ただ、永瀬も戦争の被害者だということに気づきはじめる。戦争のトラウマというのはいつまでもついて回ることなのだろう。

すべてが実話で、ラストのエリックと永瀬のふたりが写真に写っているシーンがすべてを物語っている。



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