プリンス 


 2022.1.15      小国にとっては単独での民主化は難しい 【プリンス】

                     
プリンス[ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
架空の国メコンで巻き起こる民主化への道。恐らくメコンはミャンマーなどをイメージした国なのだろう。軍事政権から民主化を目指す。メコンの大統領候補の息子が、祖国メコンのためにどう行動するのか。大統領選挙へ出馬すると宣言した父親が何者かに射殺されてしまう。母親はアメリカの傀儡となり大統領選挙へ出馬すると言う。

息子はどのような選択をするのか。真の民主化というのはアメリカやイギリスなど他国の力なしにはありえないのだろうか。本作を読むと、資源にあふれた東南アジアの小国は、大国の力により国の方針が変化するように思えて仕方がない。これが現実の姿なのだろう。その国だけで民主化を成し遂げるのは非常に困難なのだろう。

■ストーリー
民主主義は、国を豊かにし、明るい未来をもたらすのか。人気シリーズ『ハゲタカ』で、“お金は人を幸せにするか”というテーマを現代社会に投げかけた著者が、“民主主義は人を幸せにするか”というテーマに挑む渾身の1冊。軍事政権下の東南アジアの国・メコンから日本に留学したピーター・オハラは、大学で政治活動に情熱を注ぐ犬養渉と知り合い、意気投合した。

祖国メコンの民主化をめざして、父・ジミーが大統領選に出馬することを知ったピーターは、父の選挙を応援するため、渉とともに帰国する。しかし、人々の期待を一身に背負い、ジミーが帰国したその時――。アジアの「ラストフロンティア」メコンをめぐる大国の、真の目的とは!?国際政治の残酷な現実と対峙することになったピーターと渉の行く手には、何が待ち受けているのか。渦巻く陰謀、虚々実々の駆け引き……。

■感想
メコンでは軍事政権から民主化を目指すための大統領選挙が行われる。そもそも軍事政権は他国からの経済制裁により民主化へとすすむフリをしなければならない。結局は大国にすり寄るしかない。大国と同等になるには、大量の資源を保有するしかない。

本作の流れ的には真に民主化を目指すとなっている。そのためにジミーという民衆に人気の大統領が立候補し軍事政権を倒すという流れが出来上がっていたのだが…。ジミーが何者かに暗殺されてしまう。犯人は軍事政権側ではない。となると…。

ジミーが暗殺されてからはその妻が立候補する。そして、妻の後ろにはアメリカがいる。メコンの巨大な資源を狙うアメリカが、すべてを裏で糸を引いていた。それに気づいた息子はイギリスの協力を得て大統領選へ立候補するか悩む。

母と子の大統領選というのは前代未聞だろう。日本人の若者活動家の力を借りながら息子は悩み続ける。アメリカの力を得た勢力というのは恐ろしい。どこまで暴力に頼ってくるのかわからない。正体をみせないということも、アメリカの恐ろしさなのだろう。

メコンという架空の小国という描き方をされているが、現実にミャンマーなどで行われていることだろう。ミャンマーにもし豊富な資源があったとしたら、資源を狙う大国の後ろ盾を得た候補者を元に民主化へとすすんでいくのだろう。軍事政権の力というのは、大国の経済制裁の前ではほぼないに等しいのだろう。

本作では日本人の活動家が息子側の手助けをしている。日本という国は、この手の流れの中ではほとんど影響力を示すことはできないのだろう。

単独での民主化は難しいのだろう。



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