王立宇宙軍 オネアミスの翼


 2021.5.3      架空の国の描写がすばらしい【王立宇宙軍 オネアミスの翼】

                     
王立宇宙軍 オネアミスの翼
評価:3

■ヒトコト感想
王立宇宙軍の兵士であるシロツグが宇宙へ飛び立つ物語だ。すばらしいのは架空の国の物語なのだが、この架空の国の描写がすさまじい。細長いドリルのような硬貨。文字も複雑でよくわからない。ひと昔前の中東のようでありアメリカのようでもある。戦わない軍隊である王立宇宙軍が宇宙へチャレンジする。神の教えを説く少女リイクニに感化されたシロツグは、無謀にも宇宙飛行士へ志願する。

訓練描写やメディアのフィーバーぶりなど、ひと昔前の宇宙飛行士の訓練の様相がある。本作が30年近く前の作品であることに驚いた。今見ても十分楽しめる名作だ。リイクニの存在が、絶妙なアクセントとなっており、シロツグが変化していく。ダメな兵士が変化する物語?

■ストーリー
シロツク゛・ラータ゛ット。彼は戦わない軍隊、「王立宇宙軍」の兵士。この30年の歴史を誇る宇宙軍も政府には見放され、今じゃ人間どころか人工衛星すら満足にあげられない。いつの間にやら、宇宙への夢も遠ざかり訓練もさぼり放題のシロツク゛。そんなある日、街で神の教えを説くふしぎな少女リイクニに出会ったことでシロツク゛の運命は変わってしまった。シロツク゛は仲間の兵士の反対にもめげず宇宙ハ゜イロットに志願してしまったのである。かくして「王立宇宙軍」の威信と名誉挽回の宇宙飛行計画が開始された…。

■感想
シロツグは、最初はやる気のない王立宇宙軍の兵士だった。戦わない軍隊であり、宇宙への夢を語るが実現できない軍隊。危険が伴うので、誰も宇宙船のパイロットには志願しない。そんなシロツグが、リイクニと出会うことで変わっていく。

俗に言う、信仰に目覚めたというやつなのだろうか。食べる物や着る物にいっさい気を遣わず、神のお告げをプリントした紙を路上で配るリイクニ。けなげなリイクニの姿を見てシロツグにどのような変化が起きたのか。単純に性欲だけでリイクニに興味をもった感じではない。

シロツグがパイロットに立候補したので王立宇宙軍は大騒ぎとなる。ここからシロツグの周辺はあわただしくなる。訓練描写やマスコミ対応などは秀逸だ。どこの国かははっきりしない。中東やアラブの国の様相はあるのだが、アメリカ的でもある。

隣接する敵国とは戦争状態であり、宇宙へ飛び立つロケットが強奪される危険性もある。架空の国の設定だが、このセンスがすばらしい。独自の貨幣で尖がった釘のようなものがお金となる。文字も中東的ではあるがよくわからない。この雰囲気がすばらしい。

シロツグが暗殺者に狙われたりとゴタゴタがありながら、ラストでは宇宙ロケットの発射までこぎつける。すぐ近くでは、敵国から戦闘機が迫っている。シロツグの熱い思いに感化され、周りの研究者たちもロケットを飛ばすことに心血を注ぐ。

リイクニとの関係やシロツグの心の中の思いは語られることはない。よくわからない架空の国の無茶苦茶な政治や軍隊内部の軋轢などもある。それでも、純粋にロケットを宇宙に飛ばすことだけに力を注ぐ面々は、まるで文化祭の本番前夜のような一体感がある。

何より、架空の国の描写がすばらしい。



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