おとうと


 2019.2.9      ダメな身内ほどかわいい 【おとうと】

                     
おとうと [ 吉永小百合 ]
評価:3

■ヒトコト感想
ひとり娘の小春の結婚式。母親の吟子は晴れがましい気持ちでいたのだが…。そこに音信不通であった弟の鉄郎が突然やってくる。ダメ人間な弟に対して吟子がどのような態度をとるのか。早くに母親を亡くした鉄郎にとっては吟子は母親代わりのようなもの。吟子からしても子供のような存在だった。

鉄が酔っ払い大暴れしたとしても吟子は優しく鉄をかばう。鉄が一緒に暮らしていた女から金を借りてとんずらしたときには、吟子は怒りを爆発させる。ダメな子供ほどかわいいというのはあるのだろう。小春が離婚して出戻ってきたとしても、鉄郎がむちゃくちゃなことをしたとしても、吟子は微笑みながらひとり耐え忍ぶ。まさに昭和の女という感じだ。

■ストーリー
東京の郊外で、夫亡きあと小さな薬局を営み、一人娘の小春を育ててきた姉・吟子。大阪で何ひとつ成し遂げないまま歳を重ねてしまった弟・鉄郎。音信不通だった彼が突然、小春の結婚式に現れる。以前も吟子の夫の十三回忌で、酔っ払い大暴れした鉄郎。

今日は一滴も飲まないと約束するが、酒を目の前にした鉄郎は我慢できず、酔っ払って大騒ぎ、披露宴を台無しにしてしまう。激怒する身内の中、鉄郎をかばうのは吟子だけだったが、後日、ある出来事がきっかけで、吟子は鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。肩を落として出ていく鉄郎の背中に不吉な予感を覚える吟子だったが・・・・・・。

■感想
ダメな身内がいた場合、どうするのか。吟子は小春の結婚相手の家族から鉄郎のことで嫌味を言われる。確かに相手からすると、ダメ人間の叔父がいるというのは事前に知っておきたかったことだろう。そのことが小春の結婚生活に影響があったのかは…。結果として小春は出戻ることになる。

吟子はひとりで薬局を経営し、貧しいながらも幸せな生活をしていたのだが…。小春に薬局を手伝ってもらいながら、平和な日々を過ごしていた。鉄の存在は確かに問題があるのかもしれない。

鉄が消息不明となったある日、鉄と付き合っていたという女性が吟子を訪ねてくる。ここで鉄の借金問題が明らかとなる。130万もの大金を結局吟子が女に返済することになる。ここまでくると、鉄とは縁を切ってもよいのではないか?と思えてしまう。

ふらりと吟子の元を鉄が訪ねてきたとしても、吟子がつらく当たるのは当然だろう。鉄のダメ人間っぷりは強烈だ。その後は自業自得とはいえ、大阪で施設に入り余命を宣告されるにいたる。なんだかダメ人間の人生そのままだ。

鉄に対してみなは同情的な言葉をかける。そもそもダメ人間というのはあるのだが、そこから鉄は卑屈になり続ける。その先にあるのは、鉄のみじめな人生と、それを傍らで見続けた吟子の存在だ。小春にしても、いくら自分の名付け親だからと、鉄に絡まれ続けるのは辛いだろう。

吟子の亡き夫が、鉄郎に何かひとつでも責任ある結果を残させたいと小春の名付け親にした。小春の反発心もよくわかるが、最後に鉄が死にかけた状態となると、小春も鉄へ同情の気持ちを見せはじめる。

一番苦労しているのは間違いなく吟子だ。



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