2019.7.21 鳴くと電流が流れる首輪をはめられた犬 【オープンハウス】
オープンハウス / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
無職で彼女の家に転がりこんだ男の物語。仕事を始めても続かない。いつの間にか、彼女に頼りっきりの生活となる。彼女に時々なじられるので、機嫌をとろうとしてオープンハウスの見学に出かけたりもする。まぁ、ヒモの物語と言ってよいだろう。自己破産した主人公は、破産による制限など関係ない生活をしている。
何かに前向きになってやろうと考えるのではなく、日々をダラダラと過ごすだけ。そこに多少の罪悪感はあるのだが、絶対に改善したいとは思わない。多少の負い目があるからこそ、彼女の言いなりになったりもする。彼女が癇癪を起し大事な飼い犬を捨ててこいと命令する場面が強烈だ。ヒモ自身に悲壮感はないので、他者からすると早く別れた方が良いとアドバイスしたくなる関係だ。
■ストーリー
「わたし」は「あなた」にとってどんな存在なのか? 破産宣告を受けた僕。飼い主が帰らない犬のエンリケ。ミツワのマンションに居候する僕たちの奇妙な連体感…。現代風景を映した連作集。
■感想
破産宣告を受け、彼女の家に転がり込んだ男。ヒモ生活を続ける中で、自然と彼女との役割分担が出来上がる。日々ダラダラと過ごすわけではなく、家のことはちゃんとやっているようだ。それでも、彼女からしたら、無職でダラダラしていると思われるのだろう。
クレジットカードの使用過多による破産。父親に裁判所に付き添われ、そこで父親から厳しい言葉をかけられる。主人公の両親との関係も詳しく描かれており、母親が精神を病んだことも、ヒモである主人公を作り上げた要因のひとつなのかもしれない。
ヒモ生活も板についてきたころ、彼女との関係が悪化する。彼女の機嫌をとるためにオープンハウスの見学へと向かう主人公たち。到底、オープンハウスで紹介されている家など買えるはずがなく、住宅展示場の職員たちからも胡散臭い目で見られる。
あまりに自信満々に見学しているので、もしかしたら両親が資産家で2世帯住宅を建てるために見学をしているのかと勘違いされたりもする。彼女の機嫌がよくなったかと思われたが、突然変化する。この不安定さも同棲カップルにはよくあることだろう。
彼女が大事にしている飼い犬を、彼女は衝動的に捨ててこいと命令する。鳴き声がうるさいからと、鳴くと電流が流れる首輪をはめられたかわいそうな犬。それでも、狭い部屋で、まるで牢獄のような生活から、外に出られるのは犬にとってもうれしいはずだ。
ここで泣きそうになるのが、犬が無邪気な表情で楽しそうにしっぽを振っている場面だ。今から自分がどうなるかわからずにいる。吠えることのない犬だが、保健所につかまれば、あっという間に始末されてしまう。なんとも悲しい状況だ。
ヒモ男の生い立ちから、破産しヒモになる生活が描かれている。
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