おまじない 


 2021.4.16      生きづらさを感じる女性たち 【おまじない】

                     
おまじない /西加奈子
評価:3
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■ヒトコト感想
西加奈子の短編集。主人公は生きづらさを感じる女性たち。少女やファッションモデル、キャバ嬢など多種多様な女性たちの物語を描く。女らしさ、ということに反発を覚える母親の元で育った少女の物語や、田舎から東京にでてファッションモデルとして成功したは良いが、荒れた生活をつづけた少女の物語などがある。短編として誰もが共感できるような物語ではない。

ちょっと特殊で、尖がったキャラクターが登場する。作中の登場人物ほど個性的な考え方ではないにしろ、何かしら感じるものはあるのだろう。特に印象深いのは、周りから「あねご」と呼ばれ、ひたすら酒を飲み明るいキャラクターを演じる女性の物語だ。世の中にはこのあねごと同じような思いの女性は多いのかもしれない。

■ストーリー
さまざまな人生の転機に思い悩む女子たちの背中をそっと押してくれる魔法のひとこと―。著者の新境地をひらく10年ぶりの短編集。

■感想
「燃やす」は、母親は娘に対して男の子のような恰好をさせること好み、祖母は女の子らしい恰好を好む。母親の呪縛から逃れた後に、スカートをはくと、とたんにかわいいと言われることになる。女らしくすることにどのような意味があるのか。

母親の言いなりになっていた少女が、母親の言うことをおかしいと思うようになり自分で判断する。人の成長段階ではよくあることかもしれない。ただ、かわいくなったことで変なオジサンに付きまとわれたりする。そのあたりが、すんなりと終わらない物語だ。

「あねご」は強烈だ。見た目は不細工ではあるが、酒が飲めるということで短大時代からあねごと呼ばれ周りに慕われる。ベロベロになるほど毎回飲み、周りを楽しませることに長けているあねご。ついには夜の世界に入り込む。

キャバクラでもおばさんキャラを突き通すことで自分の場所を確保する。このあたり、非常に心が痛くなる。自分の生きる道は酒を飲むしかない。どれだけ相手にブスだと言われても、明るく切り返し酒を飲む。そして、モリさんというお客の中でもバカにされたおじさんが実は自分の別れた父親だということに衝撃を受ける。かなり心が痛くなる物語だ。

「いちご」は田舎でいちごをたくさん食べさせられた少女が上京しモデルとしてスカウトされる。そこから正統派美少女モデルとして成功するのだが、年齢と共にモデルも辛くなる。インスタをやり合コンをする。モデル生活の辛さというか大変さが描かれている。

乗馬を趣味とし、タトゥーを入れてセレブのふりをする。うまく金持ちと結婚できればよいのだが…。結局は田舎に帰ることになる。モデルの仕事で夢破れた人が田舎に帰る。田舎に帰ると、変わらずいちごをたくさん食べさせられる。変わらない田舎が女性を温かく迎えているのが良い。

特殊な女性の物語ばかりだ。



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