ニュートンの林檎 上 


 2019.10.22      ジェットコースターのような人生 【ニュートンの林檎 上】

                     
ニュートンの林檎(上) (集英社文庫) [ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ごく普通の大学生である僕が佐伯元子と出会い人生に大きく変化が起きる。上巻では元子と出会い、その恋人が殺され、映画監督となった僕が再び元子と再会するまでが描かれている。非常に陰鬱となる物語だ。エキセントリックな元子との出会いから始まり、元子の恋人にも大きく影響を受ける僕。

衝撃的な出来事のあと、何もかも忘れさるため映画監督になるのだが…。上巻の流れからは下巻がどのような流れになるのかまったく想像がつかない。ある意味元子の人生ともいえる本作。それぞれが歩んできた激動の人生は下巻にどのような影響を及ぼすのか。映画監督として成功したらすべて満たされるわけではない。なんとなくだが、作者の実体験が一部含まれているように感じた。

■ストーリー
1978年春、大学のキャンパス。僕は、意志的で抗いがたい魅力を湛えた、佐伯元子と出会った。そして、平穏な人生から引き剥がされてしまった。僕の心を深く突き刺し、おそろしい冒険に巻き込み、姿を消した元子。10年後、社会的には成功した僕にとって、元子との再会の予感が、生きる原動力となっていた…。人生のすべてを決めたひとりの異性との出会いを、圧倒的なスピード感とパワーで描く、渾身の長篇。

■感想
僕は元子と出会い恋をするが、元子には彼氏がいた。その彼氏は実はヤクザの組長の情婦の子だった。男はヤクザの組長を刺し追われている。それを匿うのは元子と僕だった。好きな人の彼氏となぜか共同生活をすることになるのだが、そこで男の強烈な考え方に激しく影響をうける僕。

元子と彼氏を国外逃亡させるために資産家の女の手助けを受けるのだが…。ここでも複雑な人間関係が絡んでくる。元子と事業家の女は恋人関係にあった。元子は彼氏を国外逃亡させる見返りとして女に体を売っていた。

すんなりと国外逃亡するはずだったのが、ヤクザの待ち伏せにあい彼氏は殺されてしまう。そこから僕の人生も大きく変わっていく。元子は消息不明となり僕は映画監督として成功する。忘れられない出来事を体験した結果、心の中には元子に対するわだかまりは残り続ける。

そうなると幼馴染の由香と結婚した僕も幸せな人生を送れているとは限らない。映画監督として成功しても満たされない思いがある。子どもや家庭をもてば、優先順位が変わるはずだが、そうならないのは僕の元子に対する思いの強さなのだろう。

10年の歳月が経ち、僕の元に突然元子の代理人から連絡がくる。ベネツィアにいるという元子に会うために妻の由香を連れてベネツィアへ向かう僕。ここで元子と出会い事件のあった後どのようなことが起こっていたかが語られる。衝撃的な出来事の数々だ。

元子はひとり彼氏の復讐のために動いていた。そして、復讐のターゲットは僕の身近な人にも及ぶことになる…。僕はどのような心境で元子の告白を聞いていたのだろうか。元子の行動如何によっては僕と対決する可能性すらある。

下巻の流れはまったく想像がつかない。



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