ノーサイド・ゲーム 


 2020.3.28      企業ラグビー運営の難しさ 【ノーサイド・ゲーム】

                     
ノーサイド・ゲーム [ 池井戸 潤 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
すでにドラマ版を見ているので内容についての驚きはない。ただ、企業がラグビーを続けることの難しさが伝わってきた。おそらくはプロ化したバスケなども取材したのだろう。日本ではそれほどメジャーとはいえないラグビーをどのようにして盛り上げていくのか。主人公の君島の熱さはすさまじい。そして、作中では特に描かれてはいないが、強烈な調査能力があるのだろう。ラグビーに対する情熱がすさまじく、本社への復帰する打診すら断っている。

ここまで仕事に熱くなれるサラリーマンだからこそ読者にその熱さが響くのだろう。巨額の赤字を出しながらもラグビーチームを持つ意味。WWc杯で盛り上がった時期なだけにラグビーの未来は明るいように思えてくる。

■ストーリー
未来につながる、パスがある。大手自動車メーカメーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。アストロズを再生せよ―。ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーの再建に挑む。

■感想
日本でラグビーW杯が開催される前に、盛り上げるためにドラマが放送され、それを楽しんで見ていた。原作である本作もラグビーに熱を注ぐ者たちの熱さが伝わってきた。連続ドラマではエピソードを継ぎ足していたが、原作はシンプルで逆にすっきりと重要な部分だけ楽しむことができた。

読んでいる間中、頭に思い浮かぶのはドラマ版のキャストたちばかりだ。企業がラグビーのためにどれだけ大金を投入しているのか。そして、すべてを統括する立場である蹴球協会が変わろうとしない。この流れが周りを熱くする。

池井戸作品ではおなじみのパターンが心地よい。邪魔をする奴に対しては倍返しをする。今回も、最初は敵と思っていた滝川と味方のはずであった脇坂。それがあべこべに脇坂が滝川の地位にまで上りつめると、今度は脇坂は君島を攻撃し始める。君島はラグビー部を存続するために力を注ぐのだが…。

激しい攻撃をしのいだ暁はずが、その先では強烈なインパクトのある流れとなる。圧倒的なまでの爽快感。権力闘争というか、会社内での攻守のせめぎ合いというのは、ラグビーの試合以上に熱くなるものがある。

ラグビーについても、本作を読むことでより深く理解できた。事前にドラマを見ていたというのもあるが、ラグビーの描写を違和感なく理解できた。弱小のチームに外から監督を招集し、ファンを作るための活動を地道に行い、内部のゴタゴタがありながら成長していく。

極めつけはヒーローとなる人物の入部だ。これらの要素がすべて集まっているので、盛り上がらないわけがない。ありきたりで先が読める展開ではあるが完全なスポコンではなく企業内部の権力争いまで描かれているこのバランスが最高だ。

強烈なインパクトのある企業のラグビー物語だ。



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