ノースライト 


 2019.11.29      浮き沈みの激しい建築士 【ノースライト】

                     
ノースライト [ 横山 秀夫 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
建築士の青瀬が主人公の物語。建築士は自分が作った家がその後どうなっているかが気になるらしい。雑誌にも紹介され話題となった青瀬が設計したY邸。現在ではもぬけの殻となったY邸にショックを受け、施主である吉野の行方を探る。それと並行し建築士の浮き沈みの激しさも描かれている。バブル期には景気が良くバブルがはじけると途端に仕事がなくなる。

弱小事務所に拾われた青瀬は、事務所が大きな公共事業のコンペに参加し活気づいている時に、所長である岡島が不正を働きコンペの資格を得たと報道されてしまう。建築士の悲哀や、青瀬の家族、そしてそのルーツにまで関わる物語となっている。建築士がここまで浮き沈みの激しい仕事だとは思わなかった。

■ストーリー
一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?

■感想
建築士として代表作を設計した青瀬。雑誌にも紹介されたY邸に久しぶりに訪れると、そこは人が住んでいる形跡はなかった。家の中には有名芸術家の作品である「タウトの椅子」のみがあった。事件なのか事故なのか。青瀬は施主である吉野の行方を捜すことになるのだが…。

一度家を設計し完成してしまえば、建築士はアフターケアには関係ないと思っていた。それが、自身の代表作であり雑誌にも紹介され、青瀬と言えばY邸とまで言われる家となれば、その後が気になるのも当然だろう。

建築士の浮き沈みの激しさも描かれている。バブル期では徹夜の連続とハードではあるが、それだけ実入りも良い。青瀬もシトロエンに乗ったりもする。そこからバブルが弾けるとただの建築士は仕事にあぶれ、路頭に迷う者もでてくる。

そんな状態に追い打ちをかけるように青瀬は妻と離婚してしまう。青瀬の状況は複雑だ。妻と家についての議論が発端となり不仲となる。バブルが弾け露頭に迷いかけた青瀬を助けた岡島が、もしかしたら妻に請われて青瀬を雇ったのかと変な疑いをかけたりもする。

建築士の悲哀と、公共事業のコンペ、そしてY邸の秘密が本作のメインだ。コンペの候補に選ばれたは良いが、岡島が賄賂を渡して権利を得たと週刊誌に報道されてしまう。そこから事務所は大混乱に陥る。所長がいない状態でも、意地でも良いものを作ろうと奮闘する青瀬たち。

弔い合戦となり激務を続け素晴らしい設計をする。そして、Y邸の秘密も明らかとなる。なぜ施主である吉野が青瀬に設計を依頼したのか。そこには青瀬の父親まで絡んだ壮大なドラマがあった。

設計士を主人公とした珍しい作品だ。



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