2020.1.27 作中に登場する奇妙な本 【熱帯】
熱帯 [ 森見 登美彦 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「熱帯」という幻の本をめぐる物語。相変わらず作者の作品はハードルが高い。知識的に高いものが必要というのではなく、物語を理解するのが難解だ。今回は熱帯という本を読んだはいいが、読むのを途中で止めてしまったがために先が気になる男の物語だ。
熱帯は読む人によって内容が変わるだとか、同じように熱帯を途中で読むのを止めた人たちだけのサークルのようなものすらある。熱帯とは読む人によってその内容が変わるとも言われている。序盤からこの熱帯の不思議さが語られ、後半ではその熱帯の内容が劇中劇をくりかえすように描かれている。正直最後まで読んだのだが、結局どんな物語だったのか理解できなかった。まさに本作こそ、作中の熱帯と同様ということなのだろうか。。。
■ストーリー
汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、
この言葉の真意とは?秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!
■感想
「熱帯」という作品の謎は深まるばかり。序盤では主人公である森見登美彦が熱帯を読んだ印象が語られている。そこから熱帯をもう一度読みたいと思ったとしても熱帯を見つけることができない。同じく熱帯を読んだ人たちも途中までしか読んでいないため、もう一度読みたいと考える。
熱帯は読む人により内容が変わるなどの不思議な本の雰囲気がある。幻の本である熱帯をどのようにして見つけだすのか。熱帯に魅せられた者たちで、熱帯の内容を思い出しながら記録していく。
そもそもこの熱帯という本の外側、つまり熱帯を探す人々という流れで描いている場面は、それなりによくわかる。熱帯が幻の本であり、熱帯に絡む奇妙な話は興味深い。熱帯から続いていく摩訶不思議な話も良い。
ただ、中盤以降になると熱帯の中身に入り込んでしまう。劇中劇のように入り組んだ構成のため、どこからどこまでが熱帯なのかわからなくなる。シンドバットが登場したり、ノーチラス号やネモ船長など、他作品の流れがそのまま熱帯の中に描かれている。
熱帯の劇中劇は意味不明だ。何がどうなっているのかはわからない。そのため、ちょっとしたインパクトのある流れではあるが、理解するのは難しい。作中で熱帯を読んだ人と同じ気分になっているのだろうか。
熱帯のオチについても、なんだかわからないまま終わっている。熱帯の作者と言われた男が主人公であり、その人物はネモ船長でありシンドバットでもある。結局は何が言いたいのかよくわからない。ただ、これが熱帯の奇妙さだと説明されると、妙に納得してしまう。
熱帯という作品の奇妙さは十分表現できている。
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