未来 


 2019.6.19      嫌な感じの不幸が続く物語 【未来】

                     
未来 [ 湊かなえ ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
作者の真骨頂である嫌な感じが存分に表現されている作品。20年後の自分から突然手紙が届く。その未来の自分に向かって手紙を書くのだが…。この手紙の内容が衝撃的だ。父親が死に、母親は精神に問題を抱える。娘は様々な困難にぶち当たる。娘はいじめのターゲットとされ、母親はその美しさから男に言い寄られる。

母親が知り合った男が開いたレストランでいったんは安定して生活を送れるかと思いきや…。不幸の連鎖がすさまじい。いくつかの登場人物たちの目線で描かれている本作。そのどれもが信じられないような不幸な状況となっている。すべての恨みを晴らすために殺人計画を立てるのだが…。そのオチが描かれないことが唯一の欠点かもしれない。

■ストーリー
「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという……。『告白』から10年、湊ワーールドの集大成!

■感想
章子の人生は波乱に満ちている。精神を病んだ母親と二人暮らしで、不自由な生活を送りながらも平穏に暮らしていた。そんな章子の担任の林が母親に興味を持ち始める。ここからがケチのつき始めだ。

PTAで問題となり、林の一方的なストーキングだと判明する。章子たちの面倒を見てくれた良い教師であるはずの林が実は章子の母親に興味があった。そこから、章子はクラスのリーダー的な女からイジメのターゲットとされ、みじめな日々を送る。次々襲いかかる不幸の連鎖。なぜそんなことに?と思わずにはいられない。

母親と知り合った男がレストランを経営するのだが、それもうまくいかない。男が料理の腕を見込まれ新しい店に引き抜かれるチャンスを章子が潰してしまう。偶然の要素はあるにしても、ここまで不幸が続くのはすさまじすぎる。

その後、母親が売春の手伝いをさせられていることを知り、男の殺害計画を立てる。章子が知り合う同級生も同じく不幸な状況なのだが、それが次のパートで語られることになる。誰もが不幸だ。一瞬だけ、楽しい予定が立てられたかと思いきや…。そこから怒涛の不幸が始まる。

章子と同じく学校になじめない同級生。さらには、それら生徒の教師目線のパートもある。ここでこの教師をメインとする意味は?と多少混乱してしまうが、その教師も強烈に不幸な人生を送っている。誰もが不幸で救いのない物語となっている。

結末が語られないことで、不満がある人もいるかもしれないが、ここまでの不幸は読み始めると止めることができない。何か救いを求めて次々とページをめくり続けるのだが、結局なんの救いもない。それでも、読者を引き込む力がある。

すっきりとしない作品であることは間違いない。



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