2020.10.12 見る者の記憶力を試す作品【メメント】
メメント
評価:3
■ヒトコト感想
かなり前に見たことがあったのだが、やはり強烈なインパクトがある。短期的な記憶が定着できない男レナード。観衆はレナードと同じように過去何があったかわからず物語は進む。このレナードと同じ心境というのが秀逸だ。物語が突然始まる。そして、いったん回想を挟むと、次の場面ではどのようにしてその場面につながるかが描かれる。
レナードの行動をさかのぼっていく形なのだが、最初は意味がわからないことが、だんだんと理解できてくる。真剣に見ないと意味が分からなくなる可能性が高い。まるで観衆の記憶力を試しているような作品だ。ラストの結末は、物語のスタートとなる。なぜ冒頭でレナードはひとりの男を射殺したのかの理由がここではっきりする。
■ストーリー
舞台はロサンゼルス。保険調査員のレナードの家にある日、何者かが押し入る。彼の妻はレイプされた後、殺害された。その光景を目撃したショックで、レナードは10分しか記憶を保てない前向性健忘という記憶障害になってしまう。ハンディを背負いながらも、犯人を捜し出そうとするレナード。ポラロイド写真にメモを書き込み、事件に関するキーワードは全身にタトゥーとして彫り込む。しかし謎を追えば追うほど、更なる謎が広がっていく・・・。はたして、レナードは犯人を見つけることが出来るのか?
■感想
レナードは妻をレイプし殺害した犯人を捜すため調査しつづけている。記憶が消えるため、重要なことはメモし最も重要なことは体に入れ墨を掘る。冒頭、いきなりレナードは目の前の男を射殺する。それはポラロイド写真や自分のメモと入れ墨から、目の前の男が妻の仇だと確信したからだ。
そこからどのようにして冒頭に行き着くかを細かなシーンに分けてさかのぼるように描かれていく。ある場面では何者かに殴りつけられた女の顔の傷を見て心配するレナード。次の場面では女をレナードが殴りつけていた。一瞬で忘れていたということだ。
ジャガーに乗りスーツ姿のレナード。白黒の回想の場面ではサミーという同じく短期的な記憶をなくした男のことが語られている。回想がひとつの場面の切り替えのきっかけとなっている。序盤から中盤までは意味がわからず混乱するのだが、終盤ですべてがぴたりとあてはまる。
記憶をなくすレナードを周りがからかう様子や、レナードを利用して金儲けや邪魔者を排除しようとする者など、あらゆるものたちの思惑が渦巻いている。レナードだけが記憶をなくすので、ただ自分の目的のためだけに行動する。
ラストではすべてが明らかとなる。レナードがなぜジャガーに乗りスーツを着ていたのか。そして、運よく妻の仇を見つけ出すことができたのか。すべてはレナード自身が自分の生きる目的を作っていた。妻の敵討ちはすでに終了していたが、そのことを忘れていた。
人生の目的のために、あえて少しのヒントでターゲットを決め、それを追いかけることを自分に課している。次の瞬間にはレナードはすべてを忘れているので、自分のメモを見て妻の仇を探し出そうとする。
この難解な構成を違和感なく観衆に理解させるシナリオはすばらしい。
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