2021.9.27 喫煙者の肩身が狭いのは日本もアメリカも同様だ 【メイプル・ストリートの家】
メイプル・ストリートの家 / スティーヴン・キング
評価:2.5
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。印象的なのは「十時の人々」だ。喫煙者の肩身が狭いことを揶揄するように、喫煙者だけが見ることができる蝙蝠人について描かれている。社会の上層部の人間は、一般人には普通の姿に見えるのだが、真実は蝙蝠人という怪物だった。真の姿を見ることができるのは喫煙者の限られた人物だけ。
喫煙者の人権はないに等しいことについて、作者なりに何か言いたいのだろうか。逆に喫煙などするから、見たくもない姿を見て、蝙蝠人のターゲットとされてしまう。社会の上層部に蝙蝠人がいることで、告発したとしてもすべてもみ消されてしまう。喫煙者からしたら、黙って下を向いて見て見ぬふりをするしかない。
■ストーリー
死を間近にした祖父が、林檎の花びらが舞う果樹園で、孫息子に語って聞かせた“指示”とは(「かわいい子馬」)、母親をいじめる邪悪な継父を亡き者にしようとするきょうだいたちがとったとんでもない作戦(表題作)など、子どもを描かせても天下一品の著者の才能が存分に発揮された作品を含む短篇全5篇。著者自身による作品解説付き。
■感想
「クラウチ・エンド」は印象的だ。ある夫婦が迷いこんだ街はクラウチ・エンドという奇妙な街だった。西部劇のすたれた街のようなイメージを頭の中で思い浮かべた。夫婦が街にくると、明らかに奇妙な雰囲気がある。地下で何かが起きたという曖昧な注意事項が街に表示されている。
地下鉄の事故でもなく、問題のない流れの中で、突如として夫が行方不明となる。実在しない街に迷い込んでしまった夫婦。妻だけが脱出することに成功したのだが…。クラウチ・エンドの街の描写が妙に恐ろしいのが印象的だ。
「十時の人々」は喫煙者だけが蝙蝠人を見つけてしまう。それまで普通に仕事上の上司として存在していた者が、グロテスクな蝙蝠人となっている。その姿を見続けることすら苦しい存在。明らかに怪物の姿をしているのだが、周りの非喫煙者は気づくことがない。
喫煙者の中で気づいた者たちだけの集まりがある。世間の喫煙者に対する当たりの強さに反発する作品なのだろうか。その集まりを蝙蝠人が襲撃し、喫煙者たちを殺していく。素手で目玉を抉り取るなどグロテスクな殺し方をしている。
ミステリーの要素として謎が提示されるのだが、その謎について特別な答えがないまま終わっている。表題作は母親へ暴力をふるう継父を亡き者にしようと考える四人の子供たちは、どのような行動をとるのか。その作戦を考える物語だ。
クラウチ・エンドや十時の人々は、それぞれ衝撃的なラストとはなるのだが、結局謎について解かれることはない。ホラーの作品としては良いのだろう。ミステリー的な大どんでん返しを期待してしまうと、期待はずれに感じるかもしれない。
喫煙者が肩身が狭いのは日本もアメリカも同様だ。
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