まく子 


 2018.2.19      思春期の小学生の思考 【まく子】

                     
まく子 [ 西加奈子 ]
評価:3
西加奈子おすすめランキング
■ヒトコト感想
小学5年の「ぼく」は、子どもと大人のはざまにいる。子どもから大人になる段階で、コズエという少女に出会う。綺麗で誰の目にも止まる少女であるコズエは、なんでも「撒く」ことが大好き。コズエの奇妙な行動は、ぼくに違和感をおぼえさせるが、優越感もある。小学5年というのはちょうど同級生を女として意識し始めるころだろう。

そんな時期にコズエという美しい少女と出会い、親密になっていく。コズエの行動や考え方は不可解だ。ただ、その不可解さも思春期ならではなのかもしれないと思えてくる。自分は宇宙人だと告白するコズエ。それを真に受けるのが小学生であり、思春期なのだろう。独特な行動をとるのはその時期ならではの特殊さだろう。

■ストーリー
小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしく、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきた。

コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして、彼女には秘密があった。信じること、与えること、受け入れること、そして変わっていくこと……。これは、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

■感想
ぼくが経験するのは、小学生ならではの状況だ。自分の家が経営している旅館に、友達の親子が住み込みで働きにくる。その子供であるコズエは、ずば抜けて美しい容姿をもっている。コズエがただそこにいるだけで周りの目をひく存在となる。

時おり不可解な行動をとり、なんでも撒くことが大好きなコズエ。周りがコズエに一目おくようになり、そんなコズエと親密なぼくに対する目も変わってくる。小学生時代のパワーバランスは一気に変化する。まさに本作はそんな状況が描かれている。

友達とバカっぽい遊びをする。そして、女子からすると同級生の男子はただのバカとしか見えない。女子がこっそりと小袋を手に持ちトイレに行く。男子はその意味を知りながらざわつき冷やかしたりもする。まさに典型的な小学五年生だ。

ぼくも当然、その中のひとりではある。例え父親が近所の人と不倫をしていたとしても、コズエの母親が家のものを盗んでいたとしても、ぼくは元気に学校に行くしかない。小学生ならではの悩みもあれば、大人でも悩み苦しむような状況もある。

コズエが自分のことを宇宙人と告白する。思春期に発生する、自分は人と違うのだということをアピールしたいのか、それとも真実として宇宙人なのか。コズエはただの変な人なのか、それとも…。本人の意思とは無関係に変っていく体。

成長と共に大人になるということを実感するぼく。大人になりたくないぼく。それは父親が不倫しているということもあるし、大人になるとコズエと仲良くできないというのもあるのだろう。思春期男子の思いを、女性作家である西加奈子が描く。非常によく心境が描けていると思った。

ぼくの状況は非常に共感できる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp