マダムと奥様 


 2021.11.1      中山美穂とフランスで暮らす 【マダムと奥様】

                     
マダムと奥様/辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
辻仁成が週刊誌で連載していたエッセイをまとめた作品。語り口が丁寧なので、作者の他エッセイと比べると、それが妙に面白く感じてしまう。メインの内容はフランスでの日々の生活で感じたことが描かれている。中山美穂と結婚した作者なだけに、エッセイの中では奥さんの話が頻繁に登場してくる。

まだ夫婦円満の時期のエッセイなので、面白おかしく離婚や夫婦の意見が衝突する部分が語られている。のちに離婚することになるのだが、本作では離婚の危機をうかがわせるようなエッセイはない。フランスの差別の実状だとか、子供経由での他家族のパーティに誘われるだとか。フランス生活でのあれこれが、面白おかしく描かれている。

■ストーリー
『女性自身』でお馴染みの好評連載が文庫オリジナルで登場。マダムと奥様の違いはお国柄の違いだけ?フランスと日本で消費期限は違う?子育てやしつけの違いは?パリに住んでいるからわかる日本とフランスのいいところ、悪いところ。それを、辻流に“クッキング”。普段めったに明らかにしていない辻家の日常まで詰まった「ためになる」痛快エッセイ。

■感想
連載途中でマダムと奥様というタイトルに変わったようだ。内容としても奥さんが登場することが増えている。バカ丁寧な語り口が逆に面白さを誘発している。明らかに何かへりくだったような口調で、日々の感じたことをエッセイとしている。

フランスで生活する作者なのだが、言葉の面で苦労することが多いのだろう。中山美穂という超有名人と結婚したのだが、フランスではそこまで知名度があるわけではないらしい。エッセイを読む限りは、奥さんに頭が上がらないような雰囲気を感じることができる。

作家としての仕事が中心ではあるが、バンド活動を再開したりもする。子供が幼稚園なので、その送り迎えや子供経由で他家族との付き合いの話などもある。フランス人とママ友となっている奥さんのすばらしさを語っているエッセイもある。

フランスで生活している有名人というのは、最初はかなりフランスの習慣に戸惑うらしい。当然ながら差別もあるようだ。日本では有名人でもフランスでは一般人なので、それが心地よいというのもあるのだろう。日々の生活の大変さも伝わってきた。

週一回は子供をベビーシッターに預けて夫婦ふたりで外食しているらしい。夫婦関係については週刊誌などに面白おかしく書かれたこともあるのだろう。離婚危機というのは当たり前だが、恰好のネタとなる。本作では意見の衝突はあるのだがうまくいっているように思えてくる。

ただ、現実ではふたりは離婚している。本作では離婚にいたるようなエッセイはない。最後まで夫婦円満で子供がすくすくと成長しているような雰囲気で終わっている。

独特の語り口は今までの作者のイメージからするとかなり特別感がある。



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