マダム・フローレンス! 夢見るふたり


 2020.11.1      心からフローレンスを支える執事のような夫【マダム・フローレンス! 夢見るふたり】

                     
マダム・フローレンス! 夢見るふたり [ メリル・ストリープ ]
評価:3

■ヒトコト感想
資産家のマダム・フローレンス。彼女の夫であるシンクレアとフローレンスを囲む周りの異様な状況が描かれている。まず最初に思ったのは、フローレンスは半分ボケていて、現状が良く認識できないのだろうか?ということだ。自分が音痴だということに気づかずに必死に声を張り上げるフローレンス。それを称えるシンクレアたち。物語のトーンは、資産家のフローレンスをだます悪い男がシンクレアという流れかと思っていたのだが…。

実際は、シンクレアはフローレンスの資産を狙っているわけではなく、心からフローレンスを幸せにしたいがための行動だとわかる。本作が実話をもとに描かれていることに衝撃をうけた。ラストでシンクレアがつつましい生活をつづけた、とあるのにも好感を覚えた。

■ストーリー
ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスの尽きない愛と財産は、夫のシンクレアと音楽に捧げられていた。ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、シンクレアはおひとよしなピアニストのコズメという伴奏者を見つけ、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回っていた。

しかしある日、フローレンスは世界的権威あるカーネギーホールで歌うと言い出して―。持病を抱えながらも音楽に生きる彼女の命がけの挑戦に、シンクレアも一緒に夢をみることを決める。さぁ、笑いと涙で包まれた奇跡の公演の幕があがる!

■感想
シンクレアとフローレンスの関係は夫婦ではあるが、まるで主従関係のように見えてくる。フローレンスの忠実な執事のようにサポートするシンクレア。フローレンスが寝静まったころ、自分の家に帰ると、そこには別の女性がいる。

フローレンスには知られていないが、公然の関係なのだろう。この時点で、フローレンスになんらか欠陥があり、よく現状を認識できていないのではないか?と思えてくる。その後、ピアノの演奏者を決める面接でも、一流ピアニストを忌避し、フローレンスの好みで決めている。

フローレンスの富豪具合は、シンクレアが常に相手に賄賂を渡すシーンや、ピアニストのコズメに対しての給料のくだりなど、強烈なインパクトのある流れとなっている。フローレンスはソプラノ歌手になることを夢見ている。シンクレアは夢を実現させようと奔走する。

フローレンスがコンサートを開く。フローレンスを見に来る人々は、まるで暗黙の了解のようにフローレンスを称賛する。裏ではシンクレアが賄賂を渡しているためなのだが…。新聞記者にまで賄賂を渡し、フローレンスを称賛する記事を書かせている。

フローレンスが有名になってくると、シンクレアの賄賂が通じない者たちが登場してくる。フローレンスのコンサートの流儀を守らない者もでてくる。まるで裸の王様のような状態であるフローレンス。観衆たちはみなフローレンスを称賛するのだが、新参者はフローレンスの歌声を聞いて大笑いしたりもする。

新聞社はフローレンスの歌声を酷評する記事を書く。それらについて、シンクレアはフローレンスに気づかれないようにひっそりと行動する。フローレンスの目に入りそうな新聞をすべて買い占めてしまうというのは金持ちらしさ全開だ。

最後には、みなが心からフローレンスを称賛しているのが良い。



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