クリスマスのその夜に


 2019.5.22      欧米ではクリスマスは特別な日だ【クリスマスのその夜に】

                     
クリスマスのその夜に/トロン・ファウサ・アウルヴォーグ
評価:2.5

■ヒトコト感想
クリスマスの夜に様々な者たちが独自のクリスマスを過ごす。複数の物語が繋がっていく系の作品だ。クリスマスの夜は誰もがワクワクドキドキ、幸せに満ちた夜を過ごすはずだ。ある者はサンタに変装し子供たちにプレゼントを贈ろうとする。ある者は不倫相手に会いに行こうとする。ある者は医師として夜勤をしていた時に男に呼び出され、隠れ家にいる妻の出産を手伝わされる。

民族紛争や対立の歴史などは、日本にいると感じることができないが、クリスマスの夜にもそれらの対立はある。誰もが幸せになれるクリスマスばかりではない。恐怖の中にこそ変化することもある。まともに医療を受けられない不法入国者たちにもクリスマスの幸せは訪れるのだろうか…。

■ストーリー
クリスマスの夜に巻き起こる複数のエピソードを見つめながら、不器用ながらも懸命に生きる人々の物語を描くハートウオーミング・ストーリー。監督は、『ホルテンさんのはじめての冒険』『キッチン・ストーリー』でも優しい人間ドラマを作り上げたノルウェー出身のベント・ハーメル。さまざまなエピソードがつながっていき、登場人物たちの人生が明かされていくうちに引き込まれていくストーリーの行方に注目だ。

■感想
人々が浮かれた気分になるクリスマス。そんなクリスマスの夜に運命的な出来事が巻き起こる。妻に追い出された男は、子供たちに会うためにサンタの変装をして家にやってくる。子供たちにプレゼントを渡せるのも、世界が平和であるからだ。不倫相手とのイザコザやホームレスであってもクリスマスは楽しむもの。

そんな日にも、根深い対立はある。海外でのクリスマスというのはそれだけで特殊な状況であるために、クリスマスは平和であり楽しむものという流れが根底にあるのだろう。

イヴの夜に夜勤シフトに入っている医者のクヌートは、男に呼び出され脅されながら男の妻の出産を手伝うことになる。民族紛争のために隠れ家に潜伏していたカップル。脅されながら死の恐怖におびえ、それでも医療行為を続けるクヌート。

生まれようとしてくる赤ちゃんには何の罪もない。クヌートが恐怖に打ち勝ちながら必死に子供を取り出そうとする姿というのは、宗教や対立などを超えた生命を生み出すための人間の本能に即しているように思えてきた。

日本では考えられない状況がいくつかある。民族紛争での対立やホームレスの部分は特にそう感じるだろう。クリスマスが特別な日であり、どれだけいがみ合っていたとしても、家族で過ごすということの大事さが語られている。

逆にここまでクリスマスを重視していると、クリスマスを家族で過ごせないことの負い目はすさまじいのだろう。本作ではホームレスが昔付き合っていた女と再会する場面もある。不倫相手がクリスマスの日に、妻と別れないと告げる場面もある。何かしら重大な決断をする日でもあるのだろう。

海外のクリスマスの重要性がわかる作品だ。



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