この世界の片隅に


 2019.10.23      実写ドラマよりも凝縮された衝撃【この世界の片隅に】

                     
この世界の片隅に(DVD)
評価:3

■ヒトコト感想
ドラマ版はすでに見ていた。ドラマ版のイメージがあるのだが、アニメ版の印象は大きく変わらない。連続ドラマとは異なり内容は凝縮されている。周作が娼婦と結婚する約束をしていた件や、その他のエピソードはドラマ版独自なのだろう。アニメ映画として独特な絵柄とその雰囲気でより戦時中の困難な生活を感じ取ることができた。

すずがおっとりとした性格で、どんな悲惨な状況になろうとも前向きに進もうとする力がある。戦争とはなんて悲しい出来事なのだろうと思わずにはいられない。戦争によって傷つき倒れ家族を失う人もいる。ラストで玉音放送を聞いたあとのすずが、怒りの思いをぶちまけるのはよくわかる。今までの辛い出来事は何だったのだろう、という思いが強いのだろう。

■ストーリー
1944(昭和19)年2月。18歳のすずは、突然の縁談で軍港の街・呉へとお嫁にいくことになる。夫・周作のほか、周作の両親と義姉・径子、姪・晴美も新しい家族となった。配給物資がだんだん減っていく中でも、すずは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの艦載機による空襲にさらされ、すずが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。そして、昭和20年の夏がやってくる――。

■感想
ドラマ版のイメージそのままなので、すんなりと入り込むことができた。アニメの絵柄がほのぼの系なことと、独特な広島弁が雰囲気を柔らかくしている。序盤はすずが突然結婚することになる戸惑いと、戦時中の厳しい生活が描かれている。

昭和初期ならば結婚するということの意味は、家を出て相手の家に入るということ。慣れないすずではあるが、必死に家事をこなす。結婚したてのすずの戸惑いと、ほとんど面識のない相手との結婚の戸惑いがこれでもかと描かれている。

貧しい食事と厳しい生活。比較的働き手が多いすずの家族たちでさえ苦しい生活をしている。配給だけに頼っていては餓死してしまう。そんな状況ですずは絵を書くという楽しみを見つけて日々を生きる。作中では小姑の存在があり、皆それぞれに事情がある。

すずが妊娠しないことについて作中では語られていないが、時代的な流れとして、嫁に来て子供が産めないというのはかなり強烈なプレッシャーなのだろう。あえてすずに子供をもたせなかったのは、その後の流れがあるからだろう。

辛い出来事があり広島に原爆が投下される。厳しい生活の中ですずの実家の家族も被害を受けたことを知る。戦争は何も生み出さない。破壊しかない。それでもすずたちは一生懸命生き続ける。ラストの場面では玉音放送が流れ戦争が終わったと知る。

その時のすずの怒りというのはすさまじい。大事な人を亡くし家族を失う。次は自分の番だとある意味覚悟を決めていたのだろう。そんな状態から突然梯子を外されたように戦争が終わる。死んでも死にきれないと思うのは当然のことだろう。

コンパクトにまとめられているだけに、ドラマ版よりも強烈なインパクトがある。



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