こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話


 2021.1.23      どんな障害があろうと前向きに生きる【こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話】

                     
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち
評価:3.5

■ヒトコト感想
筋ジストロフィーの患者と、患者を世話するボランティアを描いた作品。本作は実話をもとにして描かれているのだが…。主役の筋ジス患者である鹿野が強烈だ。ひとりでは何もできないからボランティアの世話になっている。ただ、そこには何一つ遠慮がない。ボランティアと対等というよりは、ボランティアよりも上の立場のようにすら思えてくる。

普通の感覚では、一人では何もできないことで卑屈になりがちだが、鹿野にはそんなことは何もない。初めてボランティアに参加した美咲が鹿野の偉そうな態度に激怒し暴言をはいたのもうなずける展開だ。鹿野の言葉にはいちいち納得してしまう。そして、何かにチャレンジする勇気がわいてくることは間違いない。鹿野の底抜けの明るさもポイントなのだろう。

■ストーリー
札幌で暮らす鹿野靖明(大泉洋)は幼少から難病を患い、体で動かせるのは首と手だけ。介助なしでは生きられないのに病院を飛び出し、ボランティアたちと自立生活を送っていた。夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出すワガママな彼に、医大生ボラの田中(三浦春馬)は振り回される日々。しかも恋人の美咲(高畑充希)に一目ぼれした鹿野から、代わりに愛の告白まで頼まれる始末! 最初は面食らう美咲だが、鹿野やボラたちと共に時間を過ごす内に、自分に素直になること、夢を追うことの大切さを知っていく。そんなある日、鹿野が突然倒れ、命の危機を迎えてしまう・・・。

■感想
首と手以外は動かせない鹿野。サポートするのはボランティアたち。周りの迷惑など顧みず、ひたすら自分の思うとおりに行動しようとする鹿野。ボランティアの協力がなければ生きられないのだが、そのことに対する負い目はいっさいない。

逆にボランティアに高圧的に命令したりもする。夜中にバナナが欲しいからとボランティアに買ってこいと命令したりもする。そんな鹿野にボランティアたちが愛想をつかさないのは鹿野の明るさと人柄なのだろう。鹿野の忖度のない言葉の数々には思わず聞き入ってしまう。

鹿野は20歳まで生きられないと言われながら生き続けている。自立し、最終的にはアメリカに行きたいとまで言う。そのために英検の勉強を続けている。鹿野の状況を見て、美咲は心を入れ替え教育大学の受験にチャレンジする。この鹿野のアグレッシブさには圧倒されてしまう。

いつ死ぬかもわからない状態ではあるが、常に前向きにすすもうとする。医者のたまごであるボランティアは安全な方向へと鹿野を導こうとするのだが…。鹿野の人生は鹿野が決める。忘れていたチャレンジする心を思い起こさせる力がある。

何度も死にかけながら生き続ける鹿野。美咲と恋愛関係になりかけたりと、鹿野のインパクトある人生はすさまじい。鹿野の軽妙な語り口は、真実ばかりだ。ボランティアに頼らなければ生きられない。しょうがない。そうするしかないから頼っている。そこに卑屈な思いはない。

旅行も行くし恋愛もする。この強い心というのはどこからくるのだろうか。同じような障害をもつ人はどう思うのだろうか。普通の人が見ると、間違いなく鹿野の考え方に感化され、鹿野の魅力のとりことなってしまうだろう。

何かにチャレンジしたいという思いが強くなる作品だ。



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