心が叫びたがってるんだ


 2019.5.6      おじさんには眩しすぎる青春物語【心が叫びたがってるんだ】

                     
心が叫びたがってるんだ。
評価:3

■ヒトコト感想
自分の発言により家族が崩壊したことで、言葉を発せなくなる少女の物語。アニメの絵柄としてのすばらしさはあるが、中身はわりとありきたりかもしれない。青春物語としてポイントが押さえられている。トラウマのある少女が、仲間と共にミュージカルで自分の思いを吐き出すことで復活する。地域ふれあい交流会の実行委員に選ばれた者たちも想定内の流れだ。

キャラクターそれぞれは立っているのだが、どうにも皆が良い人すぎて共感できない。ラストのミュージカルのシーンでは皆が素晴らしい歌声を披露する。結局のところなんだかよくわからない青春恋愛アニメのような感じになっている。主人公の坂上も野球部の田崎も現実感のないキャラクターのように感じられた。

■ストーリー
幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順。そして突然現れた“玉子の妖精"に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。

一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。 心の殻に閉じこめてしまった素直な気持ち、本当は叫びたいんだ。担任の思惑によって、交流会の出し物はミュージカルに決定するが、クラスの誰も乗り気ではない様子。

しかし拓実だけは、「もしかして歌いたかったりする?」と順の気持ちに気づいていたが、順は言い出せずにいた。そして、だんまり女にミュージカルなんて出来るはずがないと、揉める仲間たち。自分のせいで揉めてしまう姿を見て順は思わず「わたしは歌うよ! 」と声に出していた。 そして、発表会当日、心に閉じ込めた“伝えたかった本当の気持ち"を歌うと決めたはずの順だったが…。

■感想
幼いころのトラウマにより話せなくなった少女・順。交流会の実行委員となりミュージカルを企画することに…。接点のないクラスメイトと協力して委員としての仕事をする。まずこの委員のメンツが秀逸だ。優等生の美女。シニカルな少年。夢破れた高校球児。トラウマの少女。

このメンバーでは問題が起きるのも当然だろう。声をださない少女がどのようにしてミュージカルを行うのか。普通に考えると、問題なく会話できる人でも、多くの人の前でミュージカルとして歌うのは抵抗がある。

主役の坂上はなんだか知らないがモテる。優等生とも中学時代に実は付き合っていたり、順からはひそかに思いを寄せられていたり…。順のトラウマよりも、坂上をめぐる恋愛のごたごたのようにすら思えてくる。怪我をした元エースの田崎は、後輩部員たちとトラブルを起こす。

この田崎が実は一番不幸なのかもしれない。好きな女にも振られ、ラストではついには傷心の順にまで手をだそうとする。変わり身の早さではピカイチかもしれない。なぜ坂上がモテるのかも不明だが…。

青春物語として高校生たちの楽しさや人間関係の難しさというのは伝わってきた。ただ、登場人物たちが良い人すぎないだろうか。クラス全員がミュージカルに力を注ぐ。それでいて、当日に主役の順がバックレるという状況になりながら、皆が必死に協力する。

普通なら順はハブられることは間違いない。トラウマで話せない少女が、ミュージカルの場ですばらしい歌声を魅せる。まさにありえない展開でしかない。この瑞々しいまでの青春具合は、すでに青春時代を終えて数十年経つ自分にはまぶしすぎた。

今の高校生はこんな感じなのだろうか。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp