聲の形


 2018.11.15      リアルすぎる小学生のイジメ 【聲の形】

                     
映画『聲の形』DVD/アニメーション
評価:3

■ヒトコト感想
原作漫画は連載時にさわりだけ読んだ覚えがある。絵柄がきれいだが内容はろうあを扱ったり陰湿なイジメを描いたりと、かなり踏み込んだ作品だという印象があった。それがアニメ化されたのだが…。絵柄はきれいで背景もすばらしい。作品全体として統一的な意思があるようで、見ていて心地良い。さらには、キャラクターを演じている声優もよい。

ガキ大将だった石田が、小学生時代のいじめを引きづり、その後は他人と関わることのできない人生を過ごす。この石田の状況は強烈だ。西宮を含め、本作に登場するキャラクターはすべてリアルだ。特に川井のように妙に偽善的でよい子ちゃんぶる女など、まさにクラスに一人はいたはずだ。まだ本作を見ていない人はぜひ見るべきだろう。

■ストーリー
ガキ大将だった小学6年生の石田将也は、転校生の少女、西宮硝子へ無邪気な好奇心を持つ。自分の想いを伝えられないふたりはすれ違い、分かり合えないまま、ある日硝子は転校してしまう。やがて五年の時を経て、別々の場所で高校生へと成長したふたり。

あの日以来、伝えたい想いを内に抱えていた将也は硝子のもとを訪れる。再会したふたりは、今まで距離を置いていた同級生たちに会いに行く。止まっていた時間が少しずつ動きだし、ふたりの世界は変わっていったように見えたが――。

■感想
原作同様に絵柄がきれいでキャラクターも立っている。耳が聞こえない子を無邪気な思いでいじめるのは小学生ならばありがちだ。そして、ひとつのきっかけからイジメのターゲットが変わるのもまたありがちだ。本作の小学生時代で強烈に印象に残っているのは担任教師だ。

ことなかれ主義であり、イジメに気づいていながら、突如として石田を攻撃したりもする。まさに無責任な担任そのものだ。そんな担任の下で無慈悲なイジメにさらされた石田は、他人に対して極端に心を閉ざすことになる。

石田が高校生となり、自殺をしようとする。このあたりは強烈に痛々しい。学校でも親しい友達がおらず、孤独な毎日を過ごす。クラスメイトそれぞれの顔にはXのマークがついて、顔として認識できない。西宮との交流は、不器用ながらも心温まるものがある。

西宮の妹や周りの仲間たちとの交流でも、石田はどこか心の中で楽しんでいるようには見えない。小学生時代のトラウマが、成長しても石田の心を閉ざす原因となっているのだろう。絵柄に比べ内容がリアルでディープなのがよいアクセントになっている。

何よりキャラクターがリアルだ。究極に偽善的なふるまいをする女の子。自分はかわいそうな子を助ける良い子。イジメなんて絶対にしないと考えている。この手のキャラはクラスに必ずひとりはいたはずだ。自分の気持ちをはっきりと相手に伝えることができない者や、なんでも謝ればそれで済むと考える者。

リアルな人間模様がそこにある。石田がすべてのトラウマを払拭するきっかけだけは、なんだかとってつけたように感じてしまうが、それでも強烈なインパクトのある作品であることは間違いない。

絵柄と内容で強烈なインパクトを観衆に与えている。



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