コーヒーが冷めないうちに


 2020.5.20      過去に戻るには厳しいルールがある【コーヒーが冷めないうちに】

                     
コーヒーが冷めないうちに[ 有村架純 ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作は未読。タイムスリップ系の物語ではあるのだが、いくつかポイントがある。ある喫茶店の特定の席で、特定の家系の女子が入れたコーヒーを飲むと、思い浮かべた過去に行くことができる。ただ、喫茶店から出ることはできず、何をしようと過去や現在が変わることがない。この過去や現在が変わらないというのは、戻る意味があるのか?と思わずにはいられない。

いくつかのエピソードを元に構成される本作。過去に戻ることで前向きな気持ちになれたり、現在への希望ともなる。独自のルールとして最も強烈なのは、時田家の女が入れたコーヒーを飲むことでしか過去に戻れないという部分だ。時田数が過去に戻るためにはどうすればよいのか。ラストの展開は秀逸だ。

■ストーリー
時田数(有村架純)が従兄(いとこ)で店主の時田流(深水元基)と切り盛りする、とある街のとある喫茶店「フニクリフニクラ」。そこには、不思議な都市伝説があった。それは店内の【ある席】に座ると、望んだとおりの時間に戻ることができるというもの。ただし、そこにはめんどくさい……非常に面倒くさいいくつかのルールがあった。

■感想
時田家の女が入れたコーヒーを飲むと過去に戻れる。普通に考えるのは、過去に戻って何かをやり直して現在を変えたいというものだ。本作のルールとしては過去に戻っても何も変えることができない。さらには、カフェの中からすら出れない。

これはかなり限定的だが、複数のエピソードでしっかりと過去に戻る意味が描かれている。物語を通して数の恋愛が描かれており、さらにはカフェに住み着いている幽霊の秘密も明らかとなる。それぞれのエピソードにどれだけ入り込めるかで評価が分かれる作品だろう。

幼馴染と過去にこのカフェで別れた女がいた。今になってアメリカに渡る男に対して何も言わなかったことを後悔する。よくありがちな、あの時告白していれば、というパターンだ。普通に考えると過去に行き、そこで告白するというパターンかもしれない。

本作では過去でどんな行動を起こしたとしても今が変わるわけではない。ということは過去に戻って告白しても意味がない。では、どうなるかというと…。しっかりと過去に戻る意味があるのがすばらしい。現在の女の気持ちを変える出来事があるのが良い。

数の母親絡みで数自身が過去に戻りたいと考えるのがラストの展開だ。ただ、時田家の女が入れたコーヒーでしか過去に戻れない。となると、数はどのようにして過去に行くのか。ルールは絶対だが、それをアクロバティックな方法で解決している。

それまで数の恋愛が地味に描かれ、結婚を約束するような中となる男が存在する。ほのぼのとした展開と、タイムパラドックスを無視したような流れではあるが、ラストの展開がすばらしいだけにすべてが良いように思えてしまう。

原作はもっと面白いような気がする。



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