清く貧しく美しく 


 2020.9.20      非正規雇用から抜け出すために 【清く貧しく美しく】

                     
清く貧しく美しく 石田衣良
評価:3
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■ヒトコト感想
非正規雇用の男とバイトの女のカップルの生活を描く物語。堅志はAMAZONをモデルとした倉庫でピッキング作業を仕事とする。日菜子はレジ打ちのバイト。つつましい生活が描かれているのだが、その後、堅志は正社員への登用の道が開かれることになる。日菜子は自分の夢に突き進む。

作者は非正規雇用の現状を訴えたいのだろう。厳しい生活の中で、どのようにして正社員へとステップアップするのか。ただ、その中で夢をあきらめきれない者もいる。不安定な仕事につき、貧しい生活をしているのだが、そこでの将来の不安というのがこれでもかと描かれている。本作を読んで感情移入できる人はそれなりにいるのかもしれない。非正規雇用の現実が描かれている。

■ストーリー
30歳・ネット通販大手の倉庫で働く非正規の堅志と、スーパーでパートをする28歳の日菜子。二人はおたがいを守りあって生きていこうと決めた。だが、堅志に正社員登用の話がきたことをきっかけに、日々に少しずつ変化が訪れる―。

■感想
非正規雇用の実状を描いた作品。堅志と日菜子の同棲カップルは、つつましい生活をしながら日々を過ごしている。非正規というだけで格差社会では上り詰めるのは難しいのだろう。AMAZONを連想させるようなネット通販会社で非正規社員として倉庫で物品のピッキング作業を続ける堅志。

正社員への登用の話があると、今の生活から抜け出すために必死になる。周りの非正規社員たちも思いは同じなのだろう。非正規雇用というだけで堅志はどこか心の中で卑屈な思いを抱えているのだろう。

日菜子はスーパーでのレジ打ちバイトを続けている。地味なカップルの二人だが、それぞれに夢がある。日菜子は店をだすことで、堅志は物書きになること。ただ、堅志は正社員登用の話があることから、必死に正社員になろうとする。

巨大ネット通販会社の正社員であればかなりの好待遇だろう。日菜子も大喜びかと思いきや…。ここで、日菜子は意外な反応を見せる。結局のところ何を重視するかによってその人の生活は変わっていくのだろう。正社員となり人並みの生活をすることを求めていた堅志も違和感をおぼえはじめる。

日菜子は堅志が正社員になると別れようとする。堅志の将来を考え、堅志にふさわしい人とカップルとなるべきだと判断する。日菜子自身は、パートを続け夢のために頑張ろうとする。なんだか日菜子の考え方は理解するのが難しかった。

堅志が正社員になることを喜んではいるのだが、自分との立場の違いを卑下している。そんな状態なので、堅志も自分の夢のことを考え始め、少しだけそのチャンスが目の前に転がっていることを知ると、正社員の道をあきらめようとするのだが…。

夢をもつ非正規雇用の物語だ。



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