獣たちのコロシアム 池袋ウェストゲートパーク16 


 2021.3.30      世の中の動きがわかる短編集 【獣たちのコロシアム 池袋ウェストゲートパーク16】

                     
獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパーク16[ 石田衣良 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
世の中の事件や出来事を素早く作品へ昇華するスピード感は相変わらずすばらしい。IWGPシリーズ16弾。池袋のトラブルシューターのマコトが持ち込まれた事件を解決する。池袋のキングとGボーイズの力を借りるのはいつもどおり。タピオカ屋で始まり、児童虐待の裏サイトで終わる本作。

短編としてサラリと読め、予定調和的に最後には必ずマコトたちが事件を解決するのが良い。もはやサザエさん的な様相すらある。キャラが確立されているので、事件が新しいネタでないとマンネリ化してしまう。そういった意味では、本作は常に最新を取り入れているので、物語として読者を飽きさせない要素となっている。今後は、コロナ騒ぎや○○警察などもテーマとして登場してくるのだろう。

■ストーリー
タピオカ抗争、ラブホ強盗、バースデイコール詐欺、児童虐待マニア―世の中嫌になることばかりだけどマコトたちがいれば大丈夫だ。I/W/G/P第16弾!

■感想
「タピオカ抗争」は流行のタピオカ屋をヤクザが始めることと、リストラされたサラリーマンと息子の関係が描かれている。流行のタピオカ屋をヤクザが始める。儲かるからと安易に手をだすと、いずれ淘汰が始まる。池袋という土地柄か、すぐにライバルのヤクザが似たような店を始めるのだが…。

リストラされたサラリーマンが、女子高生が客としてやってくるタピオカ屋の定員となる。ミスマッチのようだが、やる気のあるバイトということでうまくいく。安易にタピオカ屋を開くことのリスクまでもが語られている。

「ラブホ強盗」はラブホを専門とする強盗が頻発する物語だ。自分は知らなかったのだが、首都圏ではラブホ強盗が発生していたのだろうか。家がラブホを経営しているマコトの同級生女子の頼みでマコトがラブホ強盗に相対する。

意外な人物が手引きをすることでラブホ強盗は成立している。ちょっとしたミステリー的な展開となっている。そして、あまりイメージがないのだが、ラブホを家族で経営している人もいるということがあらためてわかった。実家がラブホというのは、思春期の女子には複雑な状況なのだろう。

表題作である「獣たちのコロシアム」は裏サイトでの児童虐待マニアを一網打尽にする物語だ。裏サイトの情報や、そこにたどり着くための方法。そして、身元を隠すためのツールなどが物語に組み込まれている。オニオンルータを使うと、身元が判明しない状態でサイトにアクセスが可能になる。

どのような技術力があったとしても、相手をネット上で見つけ出すことはできない。唯一の方法としては、オフラインで相手に会うことしかない。そのためにマコトたちは偽の児童虐待の映像を作成し裏サイトのメンバーに入り込もうとする。

世の中の動きがわかるような短編集だ。



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