彼女たちの場合は 


 2019.11.16      少女ふたりのアメリカ旅を心配する大人たち 【彼女たちの場合は】

                     
彼女たちの場合は [ 江國 香織 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
NYの郊外に住む礼那と逸佳。14歳と17歳の従妹同士。ふたりはアメリカを見るということを心に旅に出る。年頃の女子がふたりだけで旅にでるとなると親は大騒ぎだ。ただ親の中でも騒ぎ方に違いがある。すぐにでも警察に連絡して探し出そうとする者。自分も放浪の旅を経験していたので見守る姿勢をとる者。

それらの違いが親たちの対処を鈍くする。ふたりの少女がアメリカ中を周る。そこで様々な出会いをする。最初は親のクレジットカードを使っていたが、親にカードを止められると自分たちで働いて旅費を稼ごうとする。危険な旅のように思えるが…。物語としては親の立場と子供たちの立場が交互に描かれている。危険な目に合うことなく、無事に旅を終える物語だ。

■ストーリー
「これは家出ではないので心配しないでね」14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。日本の高校を自主退学した逸佳は“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だったから。ボストン、メインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、二人の旅は続いてゆく――。美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える、江國香織二年ぶりの長編小説。

■感想
14歳と17歳の少女ふたりがアメリカの地で放浪の旅に出る。かなり危険なにおいしかしない。従妹同士のふたり。それぞれ思いはあるのだが、旅にはワクワク感がある。一方、両親は気が気ではない。家出ではないと置手紙があったとしても不安でしょうがない。

ただ親たちの中でも心配の度合いに差がある。すぐにでも連れ戻したいと必死になる親。自分も若いころに放浪の旅にでていた親としては、しばらくほおっておいても良いと考えたりもする。この親たちの考えの違いは大きな意味をもつのだろう。

ふたりはアメリカで様々な経験をする。アメリカを旅する少女たち、と言うとどうしても危険なイメージをもってしまう。誰かに襲われないだろうか。レイプされるかも。なんてことをまったく考えないふたり。天真爛漫ではあるが、一歩間違えると危険な状況におちいるのは間違いない。

具全知り合った人たちが良い人たちばかりのため、無事だともいえる。また、親のクレジットカードを好きなように使っているので、自由に移動できているともいえる。恵まれた旅だ。

親たちはついにしびれを切らしてクレジットカードを止める。そこで娘たちがすぐに帰ってくるかと思いきや…。少女たちは自分たちで働いて旅費を稼ぐことを思いつく。こうなると、今までカードの使用履歴からどのあたりにいるかが判別できたのだが、まるっきり手掛かりがなくなってしまう。

生きているかさえわからない。娘たちを信用するのか、それとも…。親たちの葛藤はすさまじい。少女たちはそんな親の気を知らず、自分たちの思うがままに活動している。

親たちの右往左往具合が物語の核だ。



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