カケラ 


 2021.10.6      女の太る痩せるは男には理解できない領域 【カケラ】

                     
カケラ [ 湊かなえ ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
太っている見た目をテーマとした作品。美容クリニックの医師・久乃の幼馴染・八重子の娘が自殺した。太っていることを苦に自殺したと思われたのだが…。久乃が様々な人物にインタビューする形で物語の全容が明らかとなっていく。美人でやせておりタレントとしても成功した久乃。太っておりあだ名が横綱であった八重子の娘が自殺したことをインタビューする久乃。

ドーナツが好きすぎて太り、その後、なんの前触れもなく娘が自殺したという流れだ。ここに何かミステリー的な仕掛けがあるのかと想像したのだが…。太っていても明るく運動神経も良い女の子がなぜ自殺したのか。その真相は、物語の最後に明らかとなる。大どんでん返しを期待したが、そうはならなかった。

■ストーリー
美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久しぶりに訪ねてきた幼なじみから「やせたい」という相談を受ける。カウンセリングをしていると、小学校時代の同級生・横網八重子の思い出話になった。幼なじみいわく、八重子には娘がいて、その娘は、高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか――?

■感想
やせるだとか太っていることは思春期の女性に限らず、女性にとっては大きな問題なのだろう。幼馴染の八重子の娘が自殺した。その真相を調べる久乃の物語だ。他者へインタビューする形で物語はすすんでいく。インタビューする相手の目線で事象が語られるため、人によって見解が大きく変わっていく。

自殺した娘の担任教師は、自分がアメリカ留学中にどれだけ大変な目にあってきたかを語りつつ、太ることは親が娘に対しての虐待だとまで言い切ってしまう。人によって出来事の印象が大きく変わっていく。

久乃は学校イチの美人で、成長してからもタレントとして成功している。対して幼馴染の八重子はその見た目からひそかに横綱とあだ名をつけられたりもする。八重子の娘が八重子と同じように太ってはいるのだが、八重子とは異なり明るく運動神経の良い人気者だった。

そんな子がなぜ自殺したのか。母親のドーナツがおいしすぎてそれを食べすぎたために太ったことを苦にしての自殺なのか。作中に登場してくるドーナツは確かにおいしそうだ。物語がすすんでいくにつれて、実は八重子の娘は夫の連れ子という衝撃の事実が判明する。

本作を男が読んだ場合、いまいち理解できない部分が多々ある。女同士の駆け引きというか、微妙なニュアンスが理解できなかった。当時の心境を登場人物が語るのだが、なぜそうなるのか。マウンティングとも違うピリピリとした雰囲気を感じてしまう。

美しい久乃に当時のことを根掘り葉掘り聞かれるのはどのような心境なのか。太ったことが自殺の原因ではないと判明するのだが、それでも自殺の真相は納得できるものではない。女の復讐心というか、複雑な人間関係により生み出された自殺だったのだろう。

すんなりと理解できる男は少ないかもしれない。



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