帰ってきたヒトラー


 2018.12.4      ヒトラーが現代のヒーローに 【帰ってきたヒトラー】

                     
帰ってきたヒトラー [ オリヴァー・マスッチ ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
もしヒトラーが現代のドイツにタイムスリップしてやって来たとしたらどうなるのか。よくできたヒトラーのコスプレ扱いをされ、モノマネ芸人扱いをされる。そして、その過激な発言が話題となりテレビに引っ張りだことなる。ヒトラーの過激な発言は、もしかしたら現代では新鮮にうつり、民衆の支持をうけるのかもしれない。

本作ではそのあたり、反対勢力を黙らせるほどの理路整然とした考えと信念があり、誰もヒトラーの勢いに対抗することができない。視聴率主義のテレビと話題性だけでヒトラーを重要視するテレビ局。その結果…。オチは納得できないのだが、ヒトラーがいつの間にか現代でも脚光を浴びるまでの流れは非常にすぐれている。

■ストーリー
ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら?「不謹慎なコスプレ男?」顔が似ていれば、「モノマネ芸人?」。リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。

自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、大衆の心を掴み始める。しかし、皆気づいていなかった。彼がタイムスリップしてきた<ホンモノ>で、70年前と全く変わっていないことを。そして、天才扇動者である彼にとって、現代のネット社会は願ってもない環境であることを―。

■感想
現代のドイツでヒトラーはどれほどタブー視されているのか。突然ヒトラーのコスプレをした人物が現れたとしてもドイツ国民は楽しみながら一緒に記念撮影をしたりもする。それでいて神経質に拒否反応を示す者もいる。

多種多様な反応の中で、ヒトラーの一本筋の通った物言いと、過激な発言を控える現代の風潮を打破するよな言動の数々にマスコミは注目し始める。最初はテレビ局内の権力争いから、ヒトラーを番組に起用し問題を起こして自分が出世しようと考えていたのだが…。予想外にヒトラーは民衆に受け、よい意味で話題となってしまった。

ヒトラーがどれだけ本物だと言っても、周りは決して信じようとしない。そして、ひとりだけそのことに気づいた者は…。ヒトラーがテレビでユーモアを交えながら現代の政治に対して警笛を鳴らす。それは、誰もが思っていながらも口にできなかった言葉だった。

となると、民衆はヒトラーをモノマネタレントとして評価し賞賛し始める。テレビマンに担ぎ上げられ、今のドイツの政治家についてもぼろくそに言う。普通に考えてもかなり問題作なのでは?と思ったのだが、ドイツでは問題なく上映されたのだろうか。

現代のドイツでもヒトラーの演説は民衆を魅了した。ヒトラー自身が怪物だとしても、その怪物を選んだ国民が悪いというのがヒトラーの言い分だ。人種差別主義者であり、天才扇動者でもあるヒトラー。ついには映画化され…。

まるで本作が撮影された根本を説明されているような気になった。このヒトラーの強烈なインパクトはすさまじい。SNSやネットを通じて、瞬く間に世界に情報が伝わるのも現代を如実に表しているのだろう。

結局ヒトラーは戻ることなく、現代に居座ったということなのだろうか。。。



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