巡礼の家 


 2020.5.9      お遍路中に立ち寄る癒しの宿 【巡礼の家】

                     
巡礼の家 [ 天童 荒太 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
四国のお遍路さんと、お遍路さんを迎える温泉宿・さぎのやをメインとした物語。行く場所を失った雛歩が、さぎのやの人々に温かく迎えられ、変わっていく成長物語だろう。序盤では雛歩の正体がよくわからず、一瞬、死の世界に雛歩が迷いこんだのでは?と思ってしまう。雛歩があまり勉強ができるわけではないので、言葉の意味をすぐに間違えてとらえてしまう。この行動に意味があるのか?と深く考えてしまった。

中盤以降は、雛歩は天然で学力が足りないためそんな状態になっているとわかる。雛歩が犯した罪の真相も明らかとなる。さぎのやに関わる様々な人々とお遍路さんにやってくる人々との交流。物語に激しい山や谷があるわけではない。どこかのんびりとした雰囲気を感じる作品だ。

■ストーリー
「あなたには、帰る場所がありますか」。「お遍路さん」を迎える場所としての道後温泉「さぎのや」。行く場所も帰る場所も失った雛歩は、この宿で自らの生き方と幸せを見つけられるか。

■感想
雛歩が登場してから、要領をえない雛歩の行動の数々に不思議な印象をもった。もしかしたら雛歩は現実ではないどこかに迷いこんだのか?という印象で物語を読み進めてきた。そこから、雛歩が実は記憶を一時的に失っていたが、たどり着いた先はお遍路さんが立ち寄る温泉宿の「さぎのや」だということがわかる。

このさぎのやの人々は苦しむ人々を受け入れる準備ができている。そんな場所なので、雛歩はすんなりと受け入れられ、ついにはさぎのやに住み着いてしまう。

さぎのやで働く人々は、みな心に傷を負っていたり悩み苦しみから逃げてきた人々ばかりだ。そんな中でも、さぎのやの伝統や女将になるまでのしきたりを知る雛歩。雛歩が密かに恋をしている飛郎は、飄々としており、幼馴染や雛歩から恋心をいだかれていることを知ってか知らずか、普通に過ごしている。

モテる男の典型的な雰囲気をかもしだしている。そこから雛歩と飛郎の交流が始まり、今のさぎのやにはどのような理由があってこうなっているのかが語られている。

雛歩自身も辛く苦しい体験がある。両親が行方不明となり、伯父の家でおじいちゃんの介護をしていた。そこで些細な事からトラブルとなりおじいちゃんを殺したと勘違いしてしまう。雛歩はどこか世間知らずで勉強ができないため、思い込みが強く、ひとりで恐怖を感じてしまう。

この雛歩のキャラがあるからこそ、ほのぼのとした雰囲気が作品全体をおおっているのだろう。大きな山や谷があるわけではない。お遍路さんをする人にはそれぞれ理由があるが、それを細かく紐解くわけでもない。

非常にのんびりとした、誰も悪者がいない、四国をテーマとした物語だ。



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