ジョバンニの島


 2019.11.4      戦争に負け、北方領土を奪われた日本【ジョバンニの島】

                     
ジョバンニの島 [ 市村正親 ]
評価:3

■ヒトコト感想
日本が戦争に負け、北方領土の色丹島をロシアに奪われたことを描いた作品。正直言うと、このあたりの歴史的な出来事は何も知らなかった。作中では戦争で負けた瞬間にロシアが島にやってきて強引に島民の家を奪うような描写がある。島民たちはロシア人を恐れるが、子どもたち同士は微妙な関係だ。学校では別のクラスでそれぞれ授業をしている。

一緒に校庭で遊んだりもする。大人たちは明らかにロシア人を恐れてはいるが、子どもたちの感覚は異なっている。ただ、最終的にはロシア人に島を追い出され、無理やりロシア本土で生活させられる。中には強制収容所に入れられた人もいる。とんでもない環境だ。島を思う人がいる間に、北方領土が日本に返還されることを願うばかりだ。

■ストーリー
想像してみてください。ある日突然、故郷を奪われた人々がいることを。子供たちの涙、大人たちの叫び、二度と故郷に帰れない悲しみ。1945年、自然豊かな色丹島。父や祖父と楽しく暮らす、10歳の純平と7歳になる弟の寛太。しかし-敗戦と共に穏やかな日々は終わりを告げる。ソ連軍が島を占拠し、島の人々の住み家は奪われる。それでも次第に心を開き合う、両国の子供たち。

そして純平は、あるロシア人の少女・ターニャに淡い恋心を抱く。だが、島の防衛隊長である父はシベリアの収容所に送られ、兄弟は極寒の地、樺太へ-。寒さと飢えに苦しみながらも、兄弟は父との再会を想い続ける。

■感想
戦争に負けた日本は北方領土をロシアに奪われた。このことを現代の人がどれだけ実感しているのか。本作では歴史的事実をわかりやすくアニメ化している。日本が戦争に負けるとロシアが色丹島に押し寄せてくる。島民たちは家を奪われてしまう。

戦争に負けるということがどういうことなのか。作中ではそこまで残酷な描写はなかったが、かなり抑えて描かれている。親たちはロシア人を恐れているが、子どもたちはそこまで恐れてはいない。ロシア人の子どもと日本人の子どもが同じ学校の別の教室で授業を受けているのは特殊な状況だ。

主人公の順平はロシアの女の子と仲良くなる。自分の家を奪い取られた家の子どもであるのに。そこには戦争や国家など関係ない、純粋な子ども同士の交流というのがある。学校の校庭でロシア人の子どもと日本人の子どもが追いかけっこをする。ほほえましい場面だ。

そこから突如として島を追い出される日本人たち。やはり戦争に負けた日本人たちはロシアの言いなりになるしかない。連れていかれた場所はロシア本国の収容所のような場所だった。かなり強烈な状況だ。

船でロシアに渡る際に、死人がでれば躊躇なく海に捨てる。強制収容所に送られる者もいる。奇跡的に日本に帰れたとしても、もう二度と色丹島には帰れないのだろう。戦争に負けるということがどういうことなのか。

そして戦争に翻弄され島を追い出された少年少女たちは、老人となってから島に訪れることができた。卒業できなかった子どもたちは、何十年か経ち島に帰ってくる。アニメとしての面白さというよりは、その状況に強烈なインパクトがあるのは間違いない。

内容に強烈なインパクトがあるのは間違いない。



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