ジョーカー


 2020.1.23      社会に不満をもつ者たちのカリスマ【ジョーカー】

                     
ジョーカー Joker グッズ ホアキン・フェニックス
評価:3.5

■ヒトコト感想
バットマンのジョーカーが、ジョーカーとなりえるまでに何があったのか。正直、バットマンのジョーカーと本作のジョーカーが同一人物とは思えない。ただ、アーサーという人間が悲惨な状況に耐えかね、社会によって作り上げられた存在がジョーカーなのだろう。ホアキンフェニックスの鬼気迫る演技がすさまじい。

アーサーの虐げられた状況と、ラストでは自分を邪見に扱った世間に対してアーサーが吠える。少し感じたのは、今の日本でも同じように感じている者がアーサーのように極端な行動にでないか?ということだ。アーサーがジョーカーとして教祖的なイメージで立ち上がるシーンでは、思わず鳥肌が立ってしまった。世間に対して溜まりにたまったうっぷんが爆発しそうな、危険な作品だ。

■ストーリー
舞台は、バットマンがその活動を開始する以前のゴッサム・シティ。アーサー・フレックは、街の片隅で大道芸人として生きる冴えない男。そんな彼を支えていたのは、母が幼少期よりアーサーに言い続けた、「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉。母の願いを叶えようと、常にピエロの扮装で笑顔を携え必死に生きてきたアーサー。しかし、そんなアーサーに世界は優しくなかった。

アーサーを恫喝しては金を奪い取っていく若者達。それでも必死に前を向いて生きてきたアーサーだったが、とうとうそんなアーサーの心を折る出来事が起こる。こうして、アーサーはその後バットマンの最大の敵となる『ジョーカー』へと変貌していくのだった。

■感想
社会が作り上げた怪物として描かれるジョーカー。脳の病で突然おかしくもないのに笑いだしてしまう。ピエロとして道化の仕事をしているが、それもうまくいかない。突然笑いだす病気のせいで他人から気味悪がられる。

アーサーの住む部屋はボロボロの廃ビルのようなアパートで、少ない収入で母親の介護をしながら生活している。アーサーの状況は非常に辛い。作中ではこれでもかと次々アーサーに不幸が押し寄せてくる。仕事をくびになり、地下鉄で3人のエリート商社マンに絡まれ、ふとした弾みで3人を射殺してしまう。

アーサーの唯一の希望は、市長の家で使用人として働いていた母親と市長の関係だ。実はアーサーは市長の息子だと母親の市長宛ての手紙で知る。アーサーは市長の家に行き、市長の息子と対面したりもする。夢も希望も潰えかけたアーサーの唯一のすがりどころであったが、全てが母親の妄想だと知る。

さらにショッキングな出来事も起きる。鬼気迫るアーサーの表情はすさまじい。すべてに絶望したアーサーが最後に選択したのはテレビの生放送中での自殺だったはずが…。

テンションが上がった時のアーサーの踊りはすさまじい。ゆっくりとダンスをするように体を揺らす。何かを決意したような表情。そして、生放送中に惨事が巻き起こる。ラストでは虐げられた者たちのカリスマのようになったジョーカー。

このラストの場面を見ると、現実でも社会に不満をもつ者がアーサーのような行動を起こさないかと心配になる。それほど、他者の心を奮い立たせる何かがある。金持ちが優遇され下層の者たちはただ地べたを這いつくばるしかない。そんな日常のうっぷんを晴らしてくれる悪のヒーローということなのだろう。

本作が危険視されたのもうなずける作品だ。



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