いつか読書をする日


 2020.12.19      平凡な中年女性のはかない一瞬の恋【いつか読書する日】

                     
いつか読書する日
評価:2.5

■ヒトコト感想
中年女性の恋が描かれている。50歳の独身女性・美奈子の平凡な日常から始まる本作。朝早く起きて牛乳配達をする。途中までは車で行くが、そこからは階段なので、ひたすら走って牛乳を配達する。その後はスーパーのレジ打ちをする。美奈子が高校時代につきあっていたのは市役所の児童課に勤める高梨。奥さんが末期がんの状態である高梨。

この高梨の仕事もまた衝撃的だ。子供を虐待している若い夫婦の家に押し入る場面は強烈だ。そこから、高梨の奥さんが死んだことをきっかけとして美奈子と高梨が急速に近づいていく。平凡な50歳の女性がどのように変化していくのか。中年たちの日常というのがゆっくりとした時間の中で描かれている。

■ストーリー
牛乳配達とスーパーのレジで働く50歳の独身女性・美奈子(田中裕子)は、読書のみを趣味に平凡な日常を過ごしていた。一方、市役所に勤める高梨(岸部一徳)は末期がんの妻・容子(仁科亜希子)を自宅で看病し続けている。美奈子と高梨は高校時代につきあっていたが、あることが原因でずっと疎遠になっていたが、今もお互い心にとどめていた。やがてそのことに気付いた容子は、ふたりを再会させようとし…。

■感想
美奈子は毎日のルーティーンをひたすら過ごしているうちに、いつの間にか50歳になってしまった感じだ。毎朝の牛乳配達ではテキパキと動き、長い坂の階段を小走りしながら牛乳を配達する。慣れたもので、配達と同時に空き瓶の回収もしている。

中には美奈子から直接牛乳を受け取りその場で飲んで空き瓶を返すおじいさんもいる。美奈子のことを、末期がんで寝たきりの高梨の妻は良く見ていた。美奈子が同年代でテキパキと毎朝牛乳配達していることにうらやましく感じているような感じすらある。

高梨の仕事は強烈だ。美奈子が働くスーパーに良く万引きをして店員につかまる子供がいた。盗むのはコロッケのみ。高梨が引き受けて家に連れて帰るのだが…。そこでは、子供の弟と思わしき子供が柱に縄跳びの縄でつながれた状態でいた。

子供はそこに並んで座り自ら縄を体に結んで、コロッケを弟と分ける。部屋の中はごみがあちこちに散らかっている。母親が帰ってくるのだが、ほっといてくれ、と叫んで高梨を追いやっている。本編とは別だが、高梨の仕事の困難さが描かれている。

高梨の末期がんの妻が死ぬと、そこから高梨と美奈子の関係が急速に近づいていく。高校時代の恋人同士であったふたりが、再会し恋に目覚める。中年の男女の恋というのは、それまでの日常との強烈な対比がある。ふたりで激しく燃えるのだが、悲しい結末がまっている。

美奈子はこれから50歳にして恋する乙女になるのかと思いきや…。高梨は川でおぼれていた子供を助けるためにおぼれ死んでしまう。この一瞬の恋というのはなんともはかない。

悲しい中年の恋だ。



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