インサイダー


 2021.8.28      ジャーナリストの気概をみせる【インサイダー】

                     
インサイダー /アル・パチーノ/ラッセル・クロウ
評価:3

■ヒトコト感想
人気報道番組が巨大タバコ産業のスキャンダルをどのように扱うのか。告発者とジャーナリスト、そして巨大タバコ企業がどのような手段にでるのか。会社の意にそぐわない意見を述べる副社長のワイガンドは、突然クビにされてしまう。CBSの人気報道番組のプロデューサーであるバーグマンは、ワイガンドへインタビューを求め、特ダネを放送しようとする。

会社から脅され、家族への危機や生活すら脅かされる状態となったワイガンド。気概のあるジャーナリストであるバーグマンを信頼してはいるのだが…。ワイガンドが苦悩するのも当然だろう。情報を漏らせば、退職金だけでなく、下手したら訴えられる可能性すらある。バーグマンはなんだかんだ言ってもしょせんは他人で、スクープだけ取れたらよいと考えるのは当然だろう。

■ストーリー
アメリカ3大ネットワークのひとつ、CBSの硬派報道番組として人気の高い「60ミニッツ」プロデューサーのローウェル・バーグマン(A.パチーノ)は世界の経済市場に君臨している巨大タバコ産業を番組で取り上げるために、全米第3位の売上げを誇るブラウン&ウィリアムソン社で、かつて研究開発部門の担当副社長であったジェフリー・ワイガンド博士(R.クロウ)にアドバイザーを依頼する。その時、バーグマンのジャーナリストとしての鋭い嗅覚は、彼の異常なまでの用心深さの裏に何かがあると感じていた。

ワイガンドは巨大タバコ産業の存在を左右する決定的な証拠を握っていたのだ。マスコミとの接触を知った会社側は、かれと家族に圧力をかけ、その生活を脅かす。ワイガンドは会社に対する怒りと、報道の人間としての信念を貫くバーグマンへの信頼感からインタビューに応じる決意をするが・・・。

■感想
巨大産業の圧力に屈するのか、それともジャーナリストの矜持を示すのか。ワイガンドは序盤では会社の圧力に屈しかけていた。退職金がなくなる、次の教員の仕事にも影響する。下手すれば訴えられてしまう。ただ、気持ち的にはタバコの害を告発する正義感に満ち溢れている。

このワイガンドの悩みの背中を押したのはバーグマンの存在だ。ただ、バーグマンがどれほど真剣かがわからない状態であれば、ただのマスコミのひとりとして考え、ここまで自分を犠牲にしてワイガンドは協力しなかっただろう。

バーグマンの思いは強烈だ。ワイガンドが圧力をかけられ、さらにはインタビューした内容が社内で変更されていた。それは、CBS内部での保身による逃げだった。バーグマンはひたすら対決姿勢を崩さない。ジャーナリストとしての気概を見せる場面だと、社長に進言する。

それぞれの立場があるため、一概になにが正しいとは言えない。高慢な女弁護士は冷静に世相を考え、もし間違えた場合にタバコ産業から訴えられる危険を避けるため、安全な方向へとものごとを進めようとする。それに追随する社長を責めるのは酷なことだろう。

ワイガンドがひとり置き去りにされる危険性がある。バーグマンが会社の圧力に負け、すべてを無かったことにした瞬間、覚悟を決めたワイガンドだけが取り残される。普通に考えれば、マスコミなんてのはそんなものなのだろう。インタビューを撮るときだけは、熱いことを語るのだが、上の力にはあっさりと屈してしまう。

バーグマンは違っていた。常にあきらめず、新聞メディアまでも動かし、すべてを明らかにしようとする。本作が実話を元にしているということに驚いた。

会社の圧力に負けるのは普通なことのように思えた。



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