イマジン? 


 2021.2.2      映画製作現場のADの物語 【イマジン?】

                     
イマジン? [ 有川ひろ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
映像制作現場を描いた作品。作者自身、原作が映像化されたことが何度もあるだけに、作者の実体験などが色濃く反映されているのだろうか。。職業モノとしての面白さがある。制作現場として一番下っ端の者にはどのような仕事が割り当てられるのか。良助が奮闘する物語だ。

出演者たちが休憩するお茶場の作成から始まり、撮影の邪魔になる工事の音があれば、なんとか音を止めてもらうように工事の手伝いまでもしてしまう。まさに撮影を円滑に回すためには何でもやるポジションなのだろう。当然ながら睡眠時間も少なく体力勝負なところがある。現場のプロデューサーとの関係や、偏屈な監督の下についた場合の苦労なども語られている。ラストの展開は原作者としての強い思いを感じてしまった。

■ストーリー
憧れていた映像制作の現場に飛び込んだ、良井良助(27歳)。そこは現実と物語を繋げる、魔法の世界だった。「うちの採用基準は想像力があるかどうか、それだけだ」専門用語が飛び交う慣れない現場であたふたする良助だったが、作品と向き合う仲間たちの熱気に、焦がれるような思いを募らせていく。

■感想
制作現場の下っ端は、思い描いていたものよりもハードなものなのだろう。テレビ番組のADがハードだとはよく聞くが映画であってもそれは同じだろう。弁当の発注から撮影中の通行人を止める仕事まで、多種多様な仕事を、すべて文句ひとつ言わずにこなすしかない。

エキストラへの演技指導などもあり、能力があるなしで現場の進行がまったく変わってくるのだろう。序盤では気難しい監督の現場での苦労が語られている。学校の屋上に雪がないからと、グラウンドから雪を運ばせるなんてことをさせられてりもする。

作中では現場のメンバーに主演の女優が恋をするという、ありえない展開もある。現実にそのようなことがあるのだろうか。。。主人公の良助は誰にでもかわいがられるタイプであり、真剣な恋愛へとつながることはない。作者の作品の中では恋愛の要素は少ない方なのだろう。

映像制作現場では、恋愛よりも仕事をこなすことの大変さが描かれている。ただ単純に仕事をすればよいだけではない。各所への調整やクレーマー的な人物にぶち当たることもある。想像を絶する苦労の数々だ。

ラストのエピソードでは、原作者が実写映画化にかなり力を入れている描かれ方をしている。これは、もしかしたら作者の思いがそのまま描かれているのだろう。小説の映像化に否定的なファンはいるが、観る自由と観ない自由がある。

気に入らなければ映像化された作品を見なければ良い。原作者がそこまで言うのはかなりすごい。原作ファンを減らす可能性すらある。ただ、そこまで映像化を応援しているというのが伝わってくる。そして、主題歌に問題があると、続編への協力を即座に断るなんてのは、作者の実体験に基づくものなのだろうか。

ラストのエピソードがなければ、純粋な職業モノとして楽しめた。



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