いけない 


 2020.1.18      何か大きなどんでん返しを期待してしまう流れ 【いけない】

                     
いけない [ 道尾 秀介 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「いけない」という言葉が最後にタイトルにつく短編臭。それぞれは単独の事件として描かれてはいるが、ミステリアスな要素が強い。それぞれの短編で事件は解決しない。何か大きな出来事が起きてそのまま終わる。そのため、その後どうなったのかが気になって仕方がない。第1章ではラストで交通事故が発生するのだが、その犠牲者は誰なのか。

第2章はラストで崖から落ちた人がいるのだが、それは誰なのか。第3章では事件の真相が明らかとなった時、どうなるのか。ラストの展開は少し消化不良だ。今までの作者の作品ではラストに大きなどんでん返しが待っていた。本作も盲目となったキャラや、過去に遺恨のあるキャラなど、癖のあるキャラクターが最後に驚きの真実を暴露するのかと思った。

■ストーリー
騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。第1章「弓投げの崖を見てはいけない」自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く。第2章その話を聞かせてはいけない」友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か? 偽物か?第3章「絵の謎に気づいてはいけない」宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが。

■感想
「いけない」というのは各章に書かれている「~してはいけない」という意味なのだろう。悪い意味に捕らえてしまうが、本作は悪い意味に近いのかもしれない。第1章は、不幸な事故で盲目となった男が事故を起こした相手に復讐する物語だ。

序盤から中盤にかけては事故の被害者の妻が復讐を行っているように思わせておいて、実は夫が生きており盲目の復讐者となっていたという流れだ。まだまだ隠された真実があるのではないかと思いつつ、その後の展開を読むしかない状態だった。

第2章は中国から日本に移住した小学生の物語だ。万引きしようとした文房具屋で殺人事件を目撃してしまう。そのことを文房具屋のおばさんに話してしまったばっかりに少年は狙われることになる。話すべきではないことを話し、死の恐怖が迫りくる。

ラストでは小学生は運よく生き残ることができ、かわりの人物が崖から落下することになる。第1章とどのような関連があるのかと気にしながら読んだのだが、ほぼない。同じ町での出来事という共通点以外は何もないような流れだ。

第3章は宗教団体の幹部女性の死体が発見されたことで物語が動き出す。集大成のような作品で、1章と2章に登場してきたキャラクターも再登場する。そして、1章と2章の結末の謎も解明する。ただ、それまでの流れからすると、もうひと段階驚かされる何かがあるのではないかと期待していた。

それが、結局のところほとんど何もなくただ事実だけを淡々と述べて終わっているような感じとなっている。作者の今までの傾向からすると、もっと強烈などんでん返しがあるものと期待していた。

ミステリーとしては小粒だ。



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